5月12日に放送されたTV東京系「未来世紀ジパング」は、「世界に貢献・日本のごみリサイクル」でした。ナビゲーターは立教大学教授の山口義行氏でした。
番組冒頭で紹介されるカナダ・ホワイトホース市には、手付かずの大自然を目的に世界中から観光客が集まってきます。しかしこの街にはゴミの埋立地があり、分別していないゴミが山積みとなっているのです(リサイクル施設は高コスト過ぎるというのです)。しかし市民の一人がネット上で日本の技術を紹介する動画を発見、ゴミをエネルギーに代える機械を知り、街へ掛け合い、助成金を獲得し、ついに市は機械を導入したのです。プラスチックを油へ代える機械です。
先の機械、作っているのは、神奈川県の従業員9人の会社・ブレストです。今、世界中から発注があるそうです。プラスチックを油に代える機械は、以前には色々な企業が作っていたのですが、日本ではプラスチック5割以上が焼却されるため(これも問題!)、大企業はこの分野から撤退していたのです。ブレストは諦めずに開発・改良を続け、動画サイトへアップすると世界から大反響があったのです。「継続は力なり」ですね。
最後の楽園・タヒチ。そこにブレストの中島清さんが呼ばれました。空港特別室でオスカー・テマル市長が待っており、タヒチのゴミ問題を解決してくれるよう依頼されたのです。タヒチにはゴミ収集システムはあるのですが、タヒチ島へ運ばれたゴミは埋立地に分別されることなく捨てられているのです。早ければ10年でいっぱいになるといいます。世界一と称される海と島に対するゴミの山。なんと凄まじいギャップでしょう(他にも北太平洋の“プラスチックのスープ”、イタリア・ナポリなどの光景が簡単に紹介されていました)。
当然、油化装置だけではゴミ問題は解決しません。ゴミの分別意識がないタヒチの人たちの意識を変えることが必須です。中島さんはまず地元の小学生達に装置のデモンストレーションを行うことから始めていました。まずは若者の意識からということかも知れません。
世界のゴミを解決するのは、日本の中小企業だといいます。1億~2億でも採算が合い、小さな町や島のニーズに対応できるからです。ブレストの油化装置は、一番売れているもので約4000万円、1日に1トン処理することができるそうです。
日本国内でもゴミから燃料をつくることが注目されつつあり、「都市油田」と呼ばれているそうです。プラスチックは再生または油化され、生ゴミや紙のゴミも再生できないものをバイオエタノールにする研究が進んでいるそうです。
次に紹介されたのはインドネシア。10年間で平均6%の経済成長とともに増えているのが、やはりゴミ。スラバヤ市にあるゴミ最終処分場には毎日1300トン以上のゴミが、やはり分別されずに投棄されています。ゴミの中からプラスチックを回収して生計を立てている人々が“ウェストピッカー”。わざわざ肉牛が連れてこられることもあるそうです。川沿いの地域では、川にせり出すように建つ家の下に日々捨てられる家庭ごみがたまり、雨が降るとゴミが川に流れ出すのです。これが東南アジア有数の都市の現実です。
そんな中でも、少しでもゴミを減らそうと日本生まれのリサイクル技術が活躍している光景を番組は報じてくれました。主婦たちからタカクラと呼ばれるバケツに生ゴミを入れ、植物の肥料に変えるというものでした。2002年に北九州市とスラバヤ市は提携し、派遣されたジェイペック若松環境研究所の高倉弘二さんが地元のバクテリアを使い開発した技術です。一軒一軒家をまわり、この技術を根付かせたということです(頭が下がります)。今やタカクラは8万軒に普及し、ゴミ排出量を約30%削減したそうです。素晴らしい。
北九州市は、公害を克服した経験を活かし、海外への環境協力を積極的に行ってきました。そして今は、国際ビジネスへの変換を図っています。その際に武器となるのが中小企業の技術です。
例として採り上げられたのが、産業廃棄物を資源にリサイクルする西原商事。スラバヤ市に進出し、新入社員・武久さんをインドネシアに派遣しました。インドネシア留学時からゴミ問題を解決したいと考えた彼女は、西原商事のインドネシア進出を知り、同社に応募したといいます。意欲が他の人とは違います。そして現地で採用した従業員は皆、元ウェストピッカーだというのがいいですね。
インドネシアでは、今やゴミに対する意識が高まり、自発的に“ゴミ銀行”というものが始まったそうです。ゴミを持っていくとお金(ポイント)が貯まるという仕組みで、実際にマラン市のゴミ銀行に行列ができる様子が紹介されました。
ゴミが今世界中で大問題になっており、他方で日本にはゴミのリサイクルに対する技術がたくさんあります。しかし技術を持っていても、なかなか世界に進出できない中小企業が多いのが現実です。そこで地方自治体が重要な役割を担うというのが番組のメッセージでした。外国の地方自治体と連携し、ゴミを減らそうという試みが幾つか行われており、北九州市以外でも成果を上げているのです。これは小生が手伝おうとしているK県でも参考にすべきですし、小生のはとこが市長をしているI市でも同様です。