日本ハムファイターズの新球場、エスコンフィールドがさる3月30日、遂に開業しました。色々なニュース・バラエティー番組で特集されていたので、ご覧になった方も多いかと思います。https://www.youtube.com/watch?v=is52i_8H980
内容的にとても充実していて、魅力的です。最新の米メジャーリーグや欧州サッカーリーグの球場経営の知恵を吸収・反映しているので、首都圏在住者でさえ「一度は行ってみたい」と思わせる出来です。
それにしてもこの日ハムの球場移転、知る人ぞ知る、とても面白い光と陰のストーリーが背後にあるのです。「光」のほうは既に色んなメディアで採り上げられていますので、ここでは「陰」のほうだけをお伝えします。
「陰」の主役は、日ハムに愛想を尽かされて逃げられた札幌市とその第三セクター。市長・助役を筆頭に、「強欲ながら無能な役人集団」を地で行くお粗末振りを呈していたのです。
札幌ドームはサッカーW杯日韓大会の札幌開催を目的として01年に開業し、2004年からは北海道日本ハムファイターズの本拠地として多くの観客を集めてきました。
でも運営する札幌市の第三セクター「株式会社札幌ドーム」に対し、球団からの年間リース代の支払額は9億円。さらにグッズなどの売り上げもすべて吸い上げられる構造でした。イベントなどのたびにトレーニング機器を片付けたりしなければならず、そうした費用もすべて球団持ち。市に払う金は年間20数億円に上っていたのです。
日ハムは過去に値下げを要求してきたものの、逆に市は値上げを実施。それに対し日ハムはコスト削減策として、他球団でも実績のある、公共施設の運営を民間企業などに委託する「指定管理者制度」の採用を市側に提案していましたが、市は拒んできたのです。
金銭面だけではありません。最大の問題はグラウンド。コンクリートの上にロール巻にした人工芝を広げただけでした。それでは堅過ぎて、選手が膝を痛める危険も高かったのです。球団は改善を要望していたのですが、札幌市からは無視され続けていました。
運営主体の札幌ドームは市幹部の大切な天下りなので、権益を手放すものかという役人根性が強く働いていたのでしょうが、ベースとして“札幌ドームを使えなくなって困るのは日ハム側”だと高を括っていたのでしょう。
2016年5月、ファイターズの新球場構想が表面化します。慌てた札幌市は今頃になってドームの野球専門化提案もしましたが、それでは折り合いがつきません。そこで2017年4月、新球場建設地として道立産業共進会場と北海道大学構内の2カ所を提案したのですが、面積不足や大学の反対などで頓挫しました。
その後、札幌五輪会場だった真駒内公園が候補地に浮上します。五輪誘致絡みのすったもんだの後、2020年12月にはファイターズに示した案での真駒内公園でと札幌市が検討を決めました。しかし周辺住民の反対が強かったこともあり、頓挫。結局ファイターズは北広島市での新球場建設との本拠地移転を決めたのです。
札幌ドームでのファイターズの試合は、オープン戦を含めて年間70日ほどでしたが、その売上は札幌ドーム全体の半分を占めていました。市は「ファイターズの日程のために遠慮してもらっていたイベントも多かった」と強がりを言っていますが、今後サッカーと音楽イベント等だけでは黒字経営は難しいと見られています。
お宝球団を失ったのは、まさに天下りによる危機感欠如がなせる業です。
「秋元(克広)市長以下、市が大馬鹿だったというしかない。ドーム運営は市の天下りが牛耳り、危機感もない。『どうせ日ハムが頭を下げてくるんだろう』と高を括っていたんですよ。今後、ドームは閑古鳥が鳴き、市で唯一黒字だった東豊線も赤字になるでしょう。馬鹿を見るのは納税者の札幌市民ですよ」という市職員OBの嘆きが当たっていると思います。