8月14日(水)のBSニュース 日経プラス10、「トーク+10」のゲストは新関西国際空港社長、安藤圭一氏。三井住友銀行の副頭取だった人である。
新関空会社は昨4月に政府の全額出資で設立された。関西国際空港と大阪(伊丹)空港が2012年7月に経営統合し、「新関西国際空港会社」による一体運営に変わっている。両空港の経営統合の狙いは、それぞれの収益性を高めて、両空港の運営権売却(コンセッション)につなげることだ。1兆2000億円を超える有利子負債にあえぐ関空の財務改善、2014年度民間への運営権売却という目標を果たせるのか?番組は社長のビジョンと経営戦略を尋ねるものだったが、その不透明さが残ったと言わざるを得ない。
関空は、伊丹が騒音問題で便数を増やせない制約を打開しようと、沖合5キロに埋め立てて建設された。しかしその埋め立てコストが高くつき、関空は開港以来、負債の足かせから逃れられず、毎年200億円にも上る利息の支払いで営業利益のほとんどが消えてしまう状況に陥っている。このあたり、旧運輸省役人と政治家のいい加減さが後々の世代につけを回した格好である。そして傾いた経営を銀行家が立て直すという、昔馴染みの光景である。
関空と、健全経営をしている伊丹空港の運営権を抱き合わせで売却し(コンセッション方式)、世界に立ち向かう態勢を築こうという計画が始まった。このため、新関空会社の当面の最大の課題は、経営権売却に有利に働くよう、両空港の収益力を向上させることだ。実際、同社は様々な手を打っている。
利用度を上げるため、関空の国際線の着陸料を昨年10月から5%値下げした。それでも36万円(B767-300 1機当たりで番組が試算)と、羽田に次ぐ高さであり。成田でさえ30万円、韓国・仁川は約14万円、中国・上海浦東が12万円、チンガポール・チャンギが16万円だから、割高感は否めない。また、国内でも本格化してきた格安航空会社(LCC)の誘致に力を入れており、ピーチなどの利用が伸びている。そのほかにも国際貨物ハブ空港としての機能強化を図っており、24時間運行がウリである関空での深夜・早朝の国際線貨物便の着陸料を半額に引き下げた。
しかし、収益拡大の方向性が明確になったとはまだまだ言えない。急速に経済成長が進むアジアの主要空港と比べると小粒感が否めない。年間乗降客数で比べると、関空の1600万人に対し、仁川は3900万人、上海浦東は4500万人、チャンギは5100万人と差はまだまだ大きい。貨物取扱量に至っては、成田の201万t、仁川の246万t、上海浦東の294万t、カンギの184万tに対し、関空は1ケタ小さい72万tに過ぎない。日本経由でアジアと北米・欧州をつなぐハブを目指すのなら、地元・関西経済圏のテコ入れとそこでの付加価値づくりが絶対必要である。