新分野に挑む技術者魂を観た

ビジネスモデル

7月29日に放送されたガイアの夜明けは「逆境の技術者~異分野への挑戦~」という、違う分野の商品をつくり人気を博している製造会社の話だった。2つの主ストーリーの間に挟まれる様々なメーカーの異分野製品も面白かった。

最初に紹介されたのは富士通の植物工場。ここの特徴は、もともと半導体工場であったこと、そして野菜を育てているのが元半導体技術者たちであること。海外勢に押されてリストラを余儀なくされ、半導体工場3棟のうち1棟を閉鎖して、野菜づくりに乗り出したのだ。

第一の工夫は、半導体事業で使っていたクリーンルームを転用すること。植物工場内にほこりを持ち込むことなく、限りなく無菌状態での栽培を可能にした。その結果、洗う必要がなく、新鮮な状態が長持ちするシャキシャキと美味しいレタスが育ち、しかも新鮮さが2週間続くという。高価だが人気のようだ。

もうひとつ半導体製造で培われた技術が採用されている。レタスを育てる液体肥料の与え方だ。半導体製造には多くの薬品を使う。その供給システムのノウハウを水耕栽培に応用した。数種類の液体肥料を、必要なときに必要な分だけ与えることができる。これが富士通の農分野でのノウハウの一部にもなっているようだ。

もう一つの柱を育てるための試行錯誤も続けた。最終的に狙いを定めたのは低カリウムほうれん草。ほうれん草400種の中から水耕栽培に適した6品種を専門家からアドバイスをもらい、実際に育ててみることとした。1ヶ月後、花が咲かず、最も生育がよかった品種を工場で育てることを決めた。カリウム含有量が少ないことで、ほうれん草特有の苦味がなく、生でも食べられる、ほうれん草となったのだ。

後半に紹介されたのは、サクラクレパスにシャープから転職した技術者、うね山氏。半導体レーザーや太陽電池などの生産技術に携わってきた。同社に存在する温度・気圧や湿度に反応して色が変わる特殊なインク技術を応用して新しい事業分野を開発することが期待されているのだ。

プラズマ加工技術は、半導体をはじめスマートフォンやテレビに使われる最先端技術だが、加工する製品に正しくプラズマが当たっているかを調べるためには、これまで特殊な計測装置で測るしか方法はなく、時間とコストがかかっていた。

そこにビジネスチャンスを見いだしたうね山氏は、特殊なインクを開発しプラズマの強さが色でわかる検査シールの開発を行っている。プラズマが強く当たるほど、色が濃く変色しる仕組みである。

何度かの試作と失敗を重ね、開発を始めて2年、待ち望まれていた商品化が決まった。これで簡単に安価にプラズマの状態を評価(検査)することが可能となり、製造業界全体の底上げに役立つ評価ツールとなる。商品名プラズマークは、1枚950円と安価で、既に数社への納入が決まっているとのこと。素晴らしい。