The Ownerという経営者向けウェブメディアの『経営者のお悩み相談所』というコーナーにて執筆していますが、今回はその第12回(私にとっては5つ目)の記事をご紹介します。題して『新しい改革を導入する際、トップダウンでやってよいか?』です。今回の経営者からの質問は『新しい改革を導入する際、トップダウンでやっても良いでしょうか?社員にどうやって分かってもらえるか、反対の声を心配しているところです』というものです。
(ここから記事の中身です)
新しく改革を導入する必要を感じた経営トップが気にすることは実現性(本当に実施徹底できるのか)と実効性(実施できたとして期待する効果が上がるのか)です。そして前者については社内の理解と一致団結が大きな成功要因です(唯一ではありません)。中小企業でも、改革を始めなければいけないと経営トップが躍起になっても、多かれ少なかれ改革には反対の声が付き物です。まずは「なぜ改革に反対する動きが出てくるのか」「それはどういう処から来る反対なのか」から考えてみましょう。
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『5つの壁』の概念を知る
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90年代前半、私(回答者)が所属していたアーサー・D・リトル(ADL)という戦略コンサルティング会社は、日本で実施した大きな企業変革プロジェクトの内容や傾向を分析し、「高収益革命シリーズ」と銘打って数冊の経営書にまとめました。その最初の『高収益革命のデザイン』という本において、企業変革を阻む『5つの壁』という概念を発表しています。この概念は、当時の私の大先輩である田畑成章さんという上級コンサルタントが原型を造り、その後のプロジェクトの中で私を含むADLチームが肉付けを行って完成させたものです。
その後、このコンセプトは他のコンサルティング会社でも流用されるようになり、今では幾つもの亜流が存在します。でもここに提示しているのがADLで完成され今では弊社でも使用しているもので(絵のイメージはアビームコンサルティングにて付加)、最も実用的だと思います。
この概念を簡単に説明します。改革を始めようとする初期段階では、大多数の人が「認識の壁」の手前にあり、そもそも改革を必要とする状況にあるという認識がありません。やがて改革が始まっても多くの人は何が問題の根源なのか、したがってどんなアプローチが有効かどうか判らず、思考停止したままです。やがて具体的なアプローチが決まって改革の具体論が出てくると、やはり大半の人が「総論賛成、各論反対」的にその具体的な対象・やり方に対し納得できなくて、腰が引けたままです。やがて改革が具体的段階に進もうとすると、最初は多くの人に当事者意識がなく自らは行動に移しません。そして改革が順調に進んだとしても、あるところまで行くと、「もういいや」と言い出す人が続出する、というものです。
(以下、記事に続く)