最近お邪魔した、ある業界での大手企業2社での話である。
相対した方は、それぞれ外資系から数年前に転職されたり有名コンサルティング会社出身だったりして、どちらもそれなりのポジションに就かれており、様々な改革の仕掛け役を任じてやってこられている。にも拘わらず、「それにしても大したもんだ」としょっちゅう思うそうだ。社内の抵抗勢力の粘り強さ、したたかさに半分感心してのセリフである。
総論では誰も改革に反対しない。それどころか、是非やろうという。しかし具体論に入った途端に、「あれも考えなきゃ、これも考慮しなきゃ」といった調子で議論を拡散する。情報システムに関する技術論(絶対に先が見通せない!)などに話をすり替えて、「難しいよね、リスクが大きいよね」というトーンに持っていく。挙句の果ては、「ではさらに調査・検討を重ねて…」というお定まりのセリフで、その方達が調整に調整を重ねた会議は具体的な進展もなく終わるそうだ。全く違う企業グループながら、こうした事情が2社とも笑えるくらいそっくりなのである。
たまたま最近実施したBPM企画WSという、セミナーと研修と研究会の相の子のようなセッション・シリーズでも研究・分析した同様の失敗事例があったので、それをお話ししたのだが、まんまと抵抗勢力の計略に引っ掛かっているのである。
ではその策略に引っ掛からずに、実際的な検討に進むためには何が必要だろうか。端的に言えば、①「そもそも論」を端折らずに、なぜ今、そんな検討・議論をしようとしているかを最初に粘り強く明確化することである(Whyの議論)。そして②そのための論点を整理することである(Where/Whatの議論)。ここで重要なことは、話を拡散しないよう、対象を絞るように議論を意識して誘導することである。この「外堀を埋める」2段階をうまく「漕ぐ」ためのファシリテーション・スキルは欠かせない。その次にようやく③どうすればうまくいく可能性が高いかというアプローチおよび選択肢に関する意見を(外部を含めて)集めるのである(Howの議論)。
うまく行かない社内検討の迷宮パターンは、いきなりHowの話を延々と続けることであり、それは社内の抵抗勢力の思う壺なのである。