ウクライナへの侵攻というロシア軍の暴挙が始まって約1週間。10対1という圧倒的戦力差の下、当初は首都・キエフを含む全土制圧まで2週間も要らないのではと予想されていました。
隣国に避難する市民の混乱と共に、またはロシアによる各地の都市への爆撃でウクライナ軍だけでなく市民の犠牲も伝えられています。ロシア軍は今、明らかに主要都市を包囲してウクライナ政府を降伏させる作戦になっています。
しかしウクライナ側の必死の抵抗を前にロシア軍の進軍が停滞する様子が伝わり始めました。中には戦場から部隊ごと(しかも戦車ごと放棄して)離脱する事例さえ現出しているそうです。幾つかの要因が重なっていそうです。
「祖国防衛」という明確な大義を持つウクライナ軍のモチベーションは高く、米欧やNATOなどから提供された最新バズーカ砲などの自衛兵器や事前の軍事訓練が意外なほどの効果を挙げている模様です(アフガン政府軍とは明らかに違います)。義勇軍として軍に参加する市民や都市にとどまって軍に協力する市民も少なくないようです。
一方、圧倒的な武力を持ちながらも、ロシア軍のモチベーションは日を重ねるごとに低下している模様です。ウクライナへの侵攻という目的を事前に知らされないまま軍事演習への参加とだけ聞かされて戦闘に投入されたロシア徴収兵も少なくないようです。
同胞と考えていたウクライナへの侵攻の実態、それに対する世界の反発を何らかの形で知らされて、「自分たちは侵略者扱いされているのか」「上から知らされている話と違う」とショックを受けて迷いながら戦闘に参加している兵士も結構いるようです。
このあとは米国を中心に日欧豪など世界の大半が参加している経済制裁が少しずつロシア軍のロジスティクスと、その源泉であるロシア本国の経済をじわりじわりと蝕むと見られます。
当初プランである電撃制圧作戦から、キエフなど主要都市の包囲作戦という「プランB」にどうやら切り替えたロシア軍が、大量の軍隊を動員した戦線を維持してウクライナを制圧できるのか、それともウクライナが籠城作戦とゲリラ戦の融合で持ちこたえてロシア軍の戦線崩壊・撤退につなげることができるのか。これは我慢比べになりそうです。
世界の警戒や非難をよそに身勝手な論理を振り回し、陰謀じみたやり方で他国に侵攻し、当初は勢いよく戦果を挙げながらも、やがて世界の主要国が一致団結して実施する経済封鎖によって国力を大幅に削がれ、やがて補給路を断たれ、間違った理想を掲げられた前線の兵士たちが困窮する…。
戦前の旧大日本帝国とその軍隊の行方、それに対する世界の見方を今、我々は追体験しているのだなと感じます。
強圧的な立場にあるリーダーが間違う時、その組織がどんな悲惨な目に合うのか、よくよく注視したいと思います。