必要なら町並みも変えるシネコンの挑戦

ビジネスモデル

7月9日のWBSで「シネコン”2強”の戦略」という特集をやっていました(我が家は皆、映画好きなのですが、見たい作品が必ずしも合わないため、折角休みが合っても一緒に行けないことも)。

複数スクリーンを持つシネコンは、1993年第一号がオープンして伸びてきたわけですが、
2010年頃をピークに伸び悩んでいるようです。今回の特集では、シネコン2強のイオンシネマとTOHO シネマズが採り上げられていました。

2013年7月にイオンが2位だったワーナーマイカルを完全子会社化、それまで1位だった東宝シネマズを抜くことになり一気に1位に躍り出ました。それから1年、攻めるシネコンの戦略をレビューしたのが今回です。

名古屋市・港区にあるイオンモール名古屋茶屋。モール内の目玉の1つがイオンシネマです。東海地区初となる立体音響システムや映画のシーンに合わせて動く座席など、最新設備が売り物です。千葉・美浜区にあるイオンモール幕張新都心で、3月に就任した牧社長が解説していました。

「ほとんどのイオンシネマはショッピングモールに入っているのです」。イオンシネマはイオンモールの出店に合わせ、去年の7月以降5館、今年さらに1館開業する予定です。立地の中心は郊外、客層はファミリーです。人が集まるモール内というのが最大の強みです。

戦略2はカフェでシネコンの人気商品のポップコーンを販売。ポップコーンの売り上げが目当てでなくて、あくまで映画館に誘導する広告の役目だそうです。ちょっと回り道かも知れませんね。さらに、ターゲットである家族にアピールする体験イベントで映画館に人を呼び込む戦略です。番組で放映していたのは結婚式を挙げていなかった人の家族式で、イオンシネマとモール内のブライダル会社が開催したものだそうです。

国内2位のTOHOシネマズ(劇場数65)は一方で、東宝がヴァージンシネマズを完全子会社化後、ブランドの統一を進めてきました。さらに新規出店も加速しています。TOHOシネマズの戸嶋雅之取締役は「都心への出店に力を入れていく」という戦略を語っていました。2017年まで日本橋・新宿・上野と、都心エリアで続々と開業します。

戸嶋取締役「より強い非日常性、そういう魅力が伝わらないと来てもらえない」。今年3月にオープンしたTOHOシネマズ日本橋がまさにその象徴。木目調の内装は高級ホテルをイメージしたデザインだそうです。TOHOシネマズ 開発建設室 小坂田陽介 マネージャー「女性をターゲットと考えている」。女性にウケる空間として「セミプライベート空間を目指した」というプレミアシートや化粧直しのスペースを設けています。実際、TOHOシネマズ日本橋の来場者数は年間目標を大きく上回る見込みで、都心の女性を狙った戦略が当たったとみています。

しかしその戦略にも課題があります。新宿歌舞伎町に出店予定(TOHOシネマズ新宿、スクリーン数 12と都内最大級)なのですが、周囲は居酒屋と風俗店だらけ。女性向きとは言いにくい環境です。しかも新宿はすでにシネコンが2つある激戦区で、競合はどちらも百貨店に近い、大通り沿いの有利な立地です。

歌舞伎町の弱点を乗り超えるため、建物から駅までの道のりを地元と東宝グループが協力して整備することにしています。「歌舞伎町をどう活性化させるか」「1年がかりで何ができるか調整している」。人の流れを変えるのはかなりの挑戦ですが、この意気込みは凄いです。