富士通は12日、4月に予定されていた従業員の定期昇給を9カ月間凍結することを労働組合と合意したと発表した。同社は半導体やパソコンの不振で(半導体はともかく、パソコンが売れなくなることぐらい読めなかったのだろうか…)、2013年3月期の純損益が950億円の赤字になる見通しで、先日リストラを発表していた。
凍結の対象は一般の従業員約2万人と、一部の関連会社従業員で、残業代などの時間外手当も一部削る。役員や管理職は4~12月の月額報酬の削減を決めており、カット幅は役員で10~50%、管理職は3~7%。管理職ではない一般従業員にも痛みを求める。人件費を削ることで業績回復を目指す(!)と報じられている。
先月の28日には、構造改革(リストラ)計画の詳細を発表している。半導体部門(子会社の富士通セミコンダクターグループ)は約2000人、欧州子会社(パソコン・サーバー製造販売の富士通テクノロジーソリューションズ)で1500人を削減。50歳以上の幹部社員を対象に早期退職優遇制度を適用し、300人を削減する。割増退職金を支払い、再就職も支援する。それに4~12月まで役員報酬を10~50%減額。管理職の報酬は3~7%カットするとされていたのが、今回確定したわけだ。
いつか見た風景である。超大手ITベンダーとして、NECと同社は同様の業績悪化にずっと悩んでいる。2009年にも、そして昨年もリストラを実施している。そのときの「今回限りです」という約束は守られなかったわけである。
両社のようなSI企業にとって、度重なる業績不振と人員削減・報酬カットは悪循環をもたらす可能性が高い。社員のモチベーションが下がって頑張りが利かなくなるということと、顧客が「頼りになる優秀な人がいなくなってしまう」「経営改善を手伝うという企業が業績不振では悪い冗談だな」といって離れてしまうので、ダブルパンチなのである。
両社に最も必要なのは管理職と一般従業員の人件費削減ではない。正しい戦略を策定・実行できないのであるから、経営上層部の総取り換えだろう。その上で、意思決定のスピードをせめて競合に近い程度まで上げるために、経営陣は少数精鋭にし、組織のフラット化と権限委譲を大胆に推し進めることではないか。
両社に限らず、日本の大手SI会社には「紺屋の白袴」の話が多過ぎる。顧客企業に提案しているような「ITを効果的に使った最先端の経営」を自ら行って欲しい。そのためには戦略性ある大胆な割り切り、スピードと徹底(小生はFST=Focus, Speed & Thoroughnessと呼ぶ)を体現できる組織になるべきで、是非「まず動いて、試してみる」企業文化を作って欲しい。