地域に根差す企業こそ持続的に発展できる。そう信じさせてくれる例を最近幾つも観る機会があった。テレビ番組にもそうした例が出ていた。その一つが人気番組「カンブリア宮殿」の10月5日 放送、「行列のできる地方銘菓スペシャル①地元愛と親子の絆が生んだ感動の菓子メーカー」(ホリ ホールディングス社長堀 昭(ほり あきら)氏をフィーチャ)だった。
全国各地の百貨店で開かれる物産展で必ず大行列を生み出す菓子メーカー・ホリのことは最近知った。熱烈なファンを生んだのは、魚介の旨みが染み込んだ「北海道開拓おかき」(これが一番有名か)や濃厚なシュークリームなどに代表される、北海道の素材の味を存分に生かしたお菓子。おかきに使うのは、えりも町の昆布に、増毛町の甘エビ、枝幸町のホタテなど、道内を探し歩いて発掘した、おかきの食感や風味を最高に引き立てる素材ばかり。牛乳や米はもちろん、リンゴだって可能な限り北海道産。
ホリは人口1万7000人の田舎町・砂川市に根差し、北海道に9店舗構えるだけなのに年商100億円にまで成長を続けてきた。その裏には、徹底的に北海道産の原料にこだわり抜くこうした戦略があったことがよく分かった。
苦労して炭鉱夫に手作り菓子を売っていた堀氏の父は、「息子たちに辛い思いをさせたくない」と、堀氏を薬科大学に行かせ、大手薬品メーカーに就職させた。しかし地元の炭坑が相次ぎ閉鎖し父の会社が経営難に陥るや、堀氏は会社を辞め、兄と共に家業を継ぐ。そして親子で北海道中をトラックで回り、懸命にお菓子を売り歩いた。商売が行き詰まる逆境の中で、堀一家が目を付けたのは、売れ始めていた夕張メロン。兄は農家へ仕入れ交渉に通い、父が試作、堀氏が生産設備設計。親子3人で必死に商品開発を続け、メロンの果肉をそのまま生かした「夕張メロンピュアゼリー」を完成、成功させたのだ。
ホリは菓子で稼いだ資金を、ビジネスで支えてくれた地元・北海道に様々な形で還元している。夕張市で減少するメロン農家を支援。砂川市では、発売したお菓子がヒットするたびに砂川市内に工場を建設し、地元の雇用も創出。さらに高齢者でも長く働けるようにと、重労働のロボット化も進めている。とても従業員を大切にしていることが伝わってきた。そして地元愛も。