The Ownerという経営者向けウェブメディアの『経営者のお悩み相談所』というコーナーで執筆した記事を時々ご紹介してきました。でも必ずしも内容の解説をしていませんでした。そこで、そうした過去に書いた相談応答記事について、なぜそうした見方をしているのか、その意義や背景などを(多分、時々ではあるものの)お伝えしたいと思います。
今回は第4回の記事『商品のネーミングのためにプロを雇うべき?それとも自分たちで考えるべき?』についてです。過去のブログで紹介した際には第1回の記事と一緒に紹介だったので、相当端折っていましたが、今回は多少深掘りしたいと思います。
【今回のご質問】
商品のネーミングを考える際は、ネーミングのプロを雇った方が良いでしょうか?
記事は次のように始まります。
「プロを雇うべきか、自分たちで取り組むべきか」。色々な場面で、こうした悩みを抱える経営者は少なくないでしょう。今回は商品のネーミングという「センスが問われる」テーマ。まずはメリット・デメリットを考えてみましょう。
原則は「テーマと自社リソース次第」だが、迷う理由もそれなりに
質問者の業種が分からないのでこの場合の「商品」がどんなものか具体的には分からないのですが、編集部要請の「BtoC向けの有形商材で想定して」で考えましょう。この場合、「プロを雇うべきか」というのは「プロ人材を正社員で採用する」ことではなく、「外部の専門家に依頼すべきか」という意図だと考えます。また、質問のニュアンスから、「従来は社内でネーミングしていたが(外れることが多いので)社外に頼んだほうがいいだろうか」という話ではなく、「今回初めて自社商品を出す(ので社内には専門家はいない)」という状況だと推察されます。
こうした「外部に依頼すべきか、自社内で何とかすべきか」という選択は経営学では”Make or Buy” questionという汎用的な研究テーマになっています。部品を自製するか外注するかは(成功確率を含めて)どちらがトータルで安く済むかで考えるのがオーソドックスなのですが、専門家市場が成り立っているようなサービスについてだと、通常はその課題テーマ分野の経験者が社内にいれば優先的に社内で検討し、いなければ社外の専門家に頼むということが原則です。要は「テーマと自社リソースが合致するかしないか」次第です。しかし本件のような「商品ネーミング」という課題テーマに関しては、たとえ経験者が社内にいなくとも、ある程度迷うのがある意味当然なのです。
・・・と、導入部としてはちょっと難し気な話を混ぜた上で、読者がちょっと気になる「フリ」を投げかけています。
経営者が迷う理由は以下のように幾つかあります。
1)「センスがものをいう」というのは分かっていても、もしかすると自社の従業員でもできるのではないか、とも思える(美大出身者などがいればなおさら。それに事実として、製薬会社の小林製薬のように自社内でネーミングを考えて成功している事例も少なくない)
2)このあとも幾つか新商品を出していくなら、自社でネーミングを考えることができる人材を育てておいたほうが長い目で見ていいのでは、とも思える
3)仮に社外の専門家に頼むとしても、その妥当な相場観が分からないのが普通(要は、初めてだとちょっとビビッてしまう)
ここを読むと読者は、「あ、そうだね。自分だってそう思うよ」という反応を示すでしょう。いわばここまでが導入部です。ここで、比較的考えやすくするためのアプローチ(考え方の切り口)を次に提示しています。ここからが本テーマの本番で、似たような状況にある会社にとっては参考になるかと思います。
いきなり判断しようと考えると迷うばかりだと思います。まずは2つのオプションのメリットとデメリットを洗い出すことから始めることをお薦めします。下表に、典型的に想定すべきものを挙げました(業界や個社の事情、または当該商品によってはこれ以外にも重要な要素があるかも知れません)。
(以下、記事に続く。無料会員の登録をしてあげてください)