再び海外に羽ばたけ、ニッポン企業③ ~ビジネスモデル開発の発想を

グローバル

ニッポンの中小・中堅企業の海外市場進出についての3つ目の話題として、進出先の国でどんな事業をするのかについて考えたい。こんなことを言うと、「今、日本でやっている事業に決まっている」という反応が返ってきそうである。しかしそれはナイーブ(世間知らず)な反応かも知れない。手慣れた既存事業をそのままやりたいのが人情だが、新興国へ進出する場合、それは保証されないのである。

価格帯や商品パッケージングを大幅に変える必要性は(BOPビジネスへの対処などとして雑誌記事などで話題になっており)あらかじめ検討しているケースが意外と多いようなので、それは置いておこう。しかしそもそも先進国と違って、バリューチェーンを成り立たせる要素や社会インフラが揃っていないケースがままあるのである。

典型的には流通チャネルや物流インフラの未整備が往々にして事業展開の阻害要因となる。収益モデルが全く変わってしまうことも多い。大手企業の場合は自ら手を拡げるか、下請けに「付いて来い」と要請できるから気楽だが、中小・中堅企業では必ずしもそうはいかず、知恵を絞らないといけない部分なのである。

例えばある専門通販会社が東南アジアの某国での事業展開を検討した際、同様の問題が起きた。現地にはパパママ経営の零細運送業者が掃いて捨てるほどあるのだが、主な都市圏を自社でカバーするような信頼できる大手宅配業がなく、下請けに依存する構造だった。そのため配達期日が保証できず(重要商品にとって致命的だった)、同社はそのタイミングでの進出を断念した(その後、日本の大手宅配業が進出したタイミングに合わせて進出)。

同様の困難を自力で切り抜けた企業もある。楽天はジャカルタで生菓子などをバイクで自宅に届ける「クール便」を昨年夏に開始した。現地に適切な宅配便サービスがないため、自ら手掛けることで他社と差別化することに踏み切ったのである。

他にも、ある部材が現地で調達できないために日本から輸入することにしたら、リードタイムが極端に延びることになってしまったメーカーの例は実は少なくない。一方で、日本では(顧客が実施するので)必要のなかったメンテナンスサービスを組み込むことで売上を伸ばしている機器メーカーもいる。ことほど左様に、異国での事業は勝手が違うものである。

要は、日本やその他の先進国でのビジネスモデルと違うものを編み出さなければ事業そのものを開始(または維持)できないことが往々にしてある、ということである。つまり、(新規事業開発における)ビジネスモデル開発の発想が必要になってくるのである。逆にいえば、そうした「現地仕様のビジネスモデル」を開発できれば競合に先んじることができ、中小・中堅企業にも逆転の目が生まれるということでもある。