ニッポンの中小・中堅企業の海外市場進出の話題を続けて、次は進出先に関しての固定観念について考えたい。
中国リスク(1.人件費の高騰、2.反日機運の高まり、3.景気後退の様相)が急増するにつれ、東南アジアが注目されている。弊社も東南アジア市場への進出をお手伝いしている。
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東南アジア進出という選択肢自体は妥当なケースが多いと思われるが、実際に進出した企業の責任者の話を聞くと、どの国を選ぶかの選択の安直さが気になる。単純に現在の人件費と人口の多さ、あとは直近のオペレーションのしやすさだけで選ぶケースが意外と多いのだ。これでは、人件費が上がると拠点をどんどん移していく「渡り鳥」企業からは脱皮できない。
東南アジアは元々世界有数の人口を抱える地域であり、既に中間消費者層が急増している有望な市場である。2006年末に正式開通した東西回廊だが、ミャンマーが国際社会に復帰することで実質的に初めて貫通する。日本から見てのグローバル・サプライチェーンが一気に機能拡大する、その中核地である。しかも2015年にはAEC(ASEAN Economic Community)が成立し、関税撤廃や規制の標準化などにより経済共同体(EUのレベルとは全く違うことは留意)となる見込みである。つまり欧州・中国に匹敵するような一大経済圏が身近に出現するのである。
こうした地域の発展ビジョンを考慮すると、業種によっては進出先候補の評価基準もおのずから変わるはずである。単に人件費の安さや工業団地の使い勝手だけではなく、東南アジア全体市場を攻略するために最も適した「橋頭保」はどこに築くべきか、という観点で考えたいものだ。