公共・公益機関が率先して労働崩壊を食い止めろ

社会制度、インフラ、社会ライフ

最近ようやく原稿を書き上げたのが介護施設における労働環境の改善に関する提言だった。そこがちゃんとできていないからこそ、利用高齢者に対する虐待が起きたり、「生活できない」と職場を去る人が続出したりするという事態が相次いでいるのだ。

そうした事態は介護や飲食業だけではなく、様々な公共サービスを担う職場でも広がっているというショッキングな報道番組があった。それが2月22日(月)に放送された「クローズアップ現代」だ。

京都市内にある保育所で30年以上のベテランなど、契約保育士全員が雇い止めを通告されたことを受けての送別会の場面から番組は始まった。利用者である子供たちや母親もストレスを感じているようだったが、何よりも雇止めの後に再就職したベテラン保母さんが、生活が成り立たないほどの低賃金(以前の半分以下!)のところしか見つけられずに苦しんでいる姿に胸が痛んだ。こんな事態が多くの保育の場で起きていることにショックを受けた。

事の発端は、財政削減の一環で京都市が公立病院を独立行政法人にしたこと。それに伴い、病院に併設している保育所も民間に委託された。委託期間は4年。委託先の会社の方針で、保育士は全員、非正規社員となったのだ。彼女たちの給料は2~3割カットと荒っぽい仕業が執られた。

さらに4年の契約満了に伴い改めて競争入札が行われたところ、新たな会社が3割以上安い価格を提示し、委託先に決まったのだという。その結果、元いた契約保育士全員が雇い止めを通告されたという事態に至るのだ。まさに「労働ダンピング」以外の何物でもない。

保育現場というものは効率化とはほとんど無縁の純人的サービスだ。それなりのコストを掛けざるを得ないと利用者および雇用主は覚悟すべきなのだ。それを単純に、3割も安い費用を提示した業者に切り替えるなどというのは、京都市および病院の行為は無見識にもほどがある。

NHKの取材に対し、京都市は「雇用安定などの労働条件については、委託先企業内で決定されるべきもの」としたうえで、実地監査の結果、「委託後も適切な保育が確保されており、今後も毎年度、監査を行い確認していく」と答えているそうだ。全く無責任かつ非人道的なコメントで、それほどコストカットしたいのなら、まずは役人の給与から始めるべきだ。

識者は、2001年以降、国が推し進めてきた構造改革が引き金になったと指摘している。確かに、「小泉構造改革」と称して日本社会の根幹を崩壊させた時代があり、その影響は大きい。経営者の半数くらいが短期的視野しか持たなくなり、人件費を削って利益を出すという行為を破廉恥だと感じなくなってしまった、亡国のリストラ流行の悪夢の時代だ。

保育分野では「公営保育所の運営費が高い」と指摘され、人件費の抑制を目的とした民営化が加速。株式会社も次々に参入し、民営化や民間委託が進められたのだ。かつて1万2,000以上あった公立の保育所が減り、現在、全体のおよそ6割が私立の保育所となっている。保育士の平均賃金はさらに下がり、およそ21万円。低賃金を理由に、離職する人が後を絶たない。

生活が成り立たない保育士が増え、保育所を増やそうにも人が集まらない、結果として母親の就職ができず、「女性活躍」が絵に描いた餅に終わる。この悪循環に、治世者たちはなぜ気づかないのか。「死ねニッポン」と嘆いたツイッター文が拡散されて物議を醸したが、本質はこういうことを放置している政治と自治体の無策ということだ。

高齢者ばかりが「かわいそう」とされがちだが、本当にかわいそうなのはワーキングプアーの女性・男性たちだ。そしてそのやせ細った腕でしか庇護されない子供たちだ。

せめて自治体自らは労働者を搾取することなく、適切な給与を支払うよう非正規から正規職員への転換を進めて欲しい。そして「公契約条例」のような仕組みの適用領域を拡げることで、発注先にも適正な人件費を計上・支払いしていることを条件づけて欲しい。
最近ようやく原稿を書き上げたのが介護施設における労働環境の改善に関する提言だった。そこがちゃんとできていないからこそ、利用高齢者に対する虐待が起きたり、「生活できない」と職場を去る人が続出したりするという事態が相次いでいるのだ。

そうした事態は介護や飲食業だけではなく、様々な公共サービスを担う職場でも広がっているというショッキングな報道番組があった。それが2月22日(月)に放送された「クローズアップ現代」だ。

京都市内にある保育所で30年以上のベテランなど、契約保育士全員が雇い止めを通告されたことを受けての送別会の場面から番組は始まった。利用者である子供たちや母親もストレスを感じているようだったが、何よりも雇止めの後に再就職したベテラン保母さんが、生活が成り立たないほどの低賃金(以前の半分以下!)のところしか見つけられずに苦しんでいる姿に胸が痛んだ。こんな事態が多くの保育の場で起きていることにショックを受けた。

事の発端は、財政削減の一環で京都市が公立病院を独立行政法人にしたこと。それに伴い、病院に併設している保育所も民間に委託された。委託期間は4年。委託先の会社の方針で、保育士は全員、非正規社員となったのだ。彼女たちの給料は2~3割カットと荒っぽい仕業が執られた。

さらに4年の契約満了に伴い改めて競争入札が行われたところ、新たな会社が3割以上安い価格を提示し、委託先に決まったのだという。その結果、元いた契約保育士全員が雇い止めを通告されたという事態に至るのだ。まさに「労働ダンピング」以外の何物でもない。

保育現場というものは効率化とはほとんど無縁の純人的サービスだ。それなりのコストを掛けざるを得ないと利用者および雇用主は覚悟すべきなのだ。それを単純に、3割も安い費用を提示した業者に切り替えるなどというのは、京都市および病院の行為は無見識にもほどがある。

NHKの取材に対し、京都市は「雇用安定などの労働条件については、委託先企業内で決定されるべきもの」としたうえで、実地監査の結果、「委託後も適切な保育が確保されており、今後も毎年度、監査を行い確認していく」と答えているそうだ。全く無責任かつ非人道的なコメントで、それほどコストカットしたいのなら、まずは役人の給与から始めるべきだ。

識者は、2001年以降、国が推し進めてきた構造改革が引き金になったと指摘している。確かに、「小泉構造改革」と称して日本社会の根幹を崩壊させた時代があり、その影響は大きい。経営者の半数くらいが短期的視野しか持たなくなり、人件費を削って利益を出すという行為を破廉恥だと感じなくなってしまった、亡国のリストラ流行の悪夢の時代だ。

保育分野では「公営保育所の運営費が高い」と指摘され、人件費の抑制を目的とした民営化が加速。株式会社も次々に参入し、民営化や民間委託が進められたのだ。かつて1万2,000以上あった公立の保育所が減り、現在、全体のおよそ6割が私立の保育所となっている。保育士の平均賃金はさらに下がり、およそ21万円。低賃金を理由に、離職する人が後を絶たない。

生活が成り立たない保育士が増え、保育所を増やそうにも人が集まらない、結果として母親の就職ができず、「女性活躍」が絵に描いた餅に終わる。この悪循環に、治世者たちはなぜ気づかないのか。「死ねニッポン」と嘆いたツイッター文が拡散されて物議を醸したが、本質はこういうことを放置している政治と自治体の無策ということだ。

高齢者ばかりが「かわいそう」とされがちだが、本当にかわいそうなのはワーキングプアーの女性・男性たちだ。そしてそのやせ細った腕でしか庇護されない子供たちだ。

せめて自治体自らは労働者を搾取することなく、適切な給与を支払うよう非正規から正規職員への転換を進めて欲しい。そして「公契約条例」のような仕組みの適用領域を拡げることで、発注先にも適正な人件費を計上・支払いしていることを条件づけて欲しい。