公共データのオープン化は低コストでの住民サービスを実現する

ビジネスモデル

政府や自治体などが保有する公共データを、誰でも簡単にインターネットから入手できる「オープンデータ」化が各国で進んでおり、そのビジネス活用に注目が集まっている。目的の1つが「経済活性化」。限られた財源下、政府や自治体が保有する公共データをインターネット上に公開し、企業などが二次利用することで新たな住民サービスを創出するという狙いである。9月22日(日)のBiz+サンデーの特集は「公共データに商機あり」。アメリカの先進例を見るとともに、日本での現状や課題を探った。

アメリカではオープンデータを活用した新ビジネスが次々誕生。その姿勢は、「とにかく政府が保有するデータは公開してしまおう。どう役に立つかは民間が考えればいい」というシンプルなもの。今や当初の1万倍の40万件のデータベースが公開されているそうだ。利用例として紹介されたのが「家庭の省エネ診断システム」のベンチャー企業・OPOWER。電力会社から各世帯の電力消費量データを受け取り、アンケート調査結果や住民票データなどと掛け合わせ、その地域での同規模世帯のグループ内での相対的な省エネ水準としての順位を示すサービスである。これでその家庭の省エネ行動が動機づけられるというわけ。

国内でのオープンデータの活用事例としては中津川にあるベンカー企業・カーリルが紹介された。全国6400の図書館の貸出図書を検索できるサービスを提供している。図書館が公開しているデータとアマゾンの書誌・書影データを組み合わせるだけだが、便利なので人気らしい。カーリルはこの利用状況の情報(どの図書館でどの本がどれほど貸し出されているか)を、例えば学術系出版社に販売しようとしている。従来、出版社は取次からの「出荷-返本」データか、大手書店の売れ行き状況しか把握できなかったので、これはマーケティング的に意味があるはずだ。

眼鏡の産地で有名な鯖江市のオープンデータの取組みも紹介された。現在、鯖江市では国に先駆け、行政が所有する様々な情報をインターネット上にオープンデータとして公開し、民間が二次利用することで新たな公共サービスを創出する試みをしている。現在、避難所やAED、市の施設、市営駐車場、コミュ二ティバス、文化財、消火栓などの26データを公開。それを受け、まち歩き情報や見どころ案内、避難所の位置とルート、AED設置位置、駐車場など約40のアプリが民間IT企業や市民の手によって誕生しているという。

課題も指摘されていた。鯖江市の担当者は「道路工事による道路規制状況」のデータも公開したい考えだが、1)情報量が多く、公開のための人手がこれまで以上に掛かる、2)工事進捗に合わせて情報を随時更新するのがさらに大変、といったところだ。道路工事業者が入力・更新をしてくれればいいのだろうが、容易ではない。米国の事例では周辺住民が自主的に水道故障・工事の情報を更新するような動機づけを行っていたが、そうした工夫が求められる。

番組の中で東京大学の坂村健教授が解説していた。発展途上国ではなく先進諸国において、限られた予算の中で、これからどう成長を引き出すかが課題。その解決策として、低コストでイノベーションが期待できる可能性の最も高いのがオープンデータであると指摘していた。つまりデータをオープン化することで、全部(高コストの)政府がやるんじゃなくて、みんなでやろうということになれば、低コストで済むということ。しかも思いもつかないことを引き出すことができる。どうなるのかというのはわからない、それがイノベーションだとも。とにかく前進するんだ、ということが、オープンデータ化を押し上げるんだとも指摘されていた。全くその通りだ。