個人が気軽に店を開設する時代がやってきた!?

ビジネスモデル

2月12日(火)の『ガイアの夜明け』はある意味衝撃的だった。題して「あなたも繁盛店を作れる!」。冒頭は東急ハンズでのノンプロ作品の販売コーナーの紹介で、軽いジャブ。しかしこのあとが面白かった。

吉祥寺の商店街で週末だけ鮮魚を売る吉川仁さんは「iPad魚屋さん」と呼ばれる。店に魚は置いていない。あるのはタブレット端末のiPadだけ。小樽の鮮魚店(こちらはiPhone)と生中継でつながっており、客は小樽の店とやりとりしながら新鮮な魚を注文する。夕方までに頼めば翌日には東京の自宅に届く。この仕組みは鮮魚店経営者・〇さんが考えたようで、吉川さん(週日はトラック運転手)には売上の15%が入るという。

東京・三軒茶屋の洋品店「三恵」は近所にオープンした大型店に押され、売上は年々低下している。3代目の飯島琢久哉さんは、低コストで客と店をつなぐ「iPad魚屋さん」の評判を聞き、見学したうえで自分もできると思い立つ。そして「昔の常連さんに売ってみたい」と、老人ホームとの生中継に挑む様子が番組では紹介されていた。

練習段階では店員がうまくカメラを操作できないのだが、本番では老人ホームに引き籠る昔の常連さんが懐かしそうに画面を覗き込み、店内を映してもらって買い物を楽しむ姿が印象的だった。客に感謝された飯島さんが涙ぐむ場面は感動的ですらあった。ここには超高齢化社会・ニッポンの小売が挑む未来像のヒントがある。

実は個人的に凄いと思ったのは、むしろこのあと。「ストアーズ・ドット・ジェーピー」という、「2分で簡単にインターネット上に店が持てる」というサービスである。従来難しかったオンライン店舗の開設が実に簡単にできる。しかも1ヵ月の出品は5品までは無料(6品以上は月980円)と衝撃的に安い。

会社から早期退職を迫られた61歳の元管理職の男性が、このサービスを使って自分の店をネット上に立ち上げた様子が紹介されていた。退職当初はショック状態だったというが、今は趣味で作り始めたアクセサリーを販売するようになり、やりがいを見つけたという。値段は一つ5000円前後であるが、立ち上げてから1ヵ月程で既に15個売り上げている。

それ以外にも面白い事例が紹介されていた。市川市に住む妻沼大介さんはインターネット店「1012 TERRA」を立ち上げ、それだけで生計を立てている。ガラスを使ったサボテンの水耕栽培の容器を自作し、1個1万円から3万円で販売している。多いときには60万円を超すこともあるという。

大田区の橋本未来さんは大学で空間デザインを学んでいたが、就職氷河期ゆえにデザイン関係の会社には就職できず、卒業後は父親の町工場を手伝ってきた。工場の隅にある端材を使ってアクセサリーを作ることを思いついたが、フリーマーケットでは全く売れず、落ち込んだという。しかしストアーズ・ドット・ジェーピーと出会って、mkという店をインターネット上に立上げた。売り上げはまだ5万円程度だが、今後はこちらを本業にしたいと考えているそうだ。

どの人も、自分の店を低コストで開設できたこと、自分の作る作品が直接消費者に評価されることに、とても生き生きとした表情を見せていた。ストアーズ・ドット・ジェーピーのようなサービスがどんどん出てきて、特殊な縁や資格がなくともやりたいことができる世界が拡がる、そんな素敵な世の中になりつつあるのかも知れない。