ここ数年は景気も回復気味だったせいもあり、(シャープや東芝といった特定の企業を除いては)大企業一般ではあまりひどい人事ニュースにはお目に掛からなくなっていた。しかし4月13日(水)に放送されたクローズアップ現代の内容は衝撃的だった。
多分、王子製紙の話だろうとは思うが(NHKゆえ個別企業名は極力出さないようになっている)、大手製紙会社が業績好調なのに、40~50代の社員に退職勧告を繰り返していたというのだ。しかもその背後には人材サービスの暗躍があるようだ。
NHKでは、実際に退職を勧めた人たちの一覧を独自に入手。40代、50代の働き盛りの中高年社員が数多くリストアップされていたこと、その対象が、病気になった人や、性格がおとなしい人、働き方に大きな問題がないと見られる社員も多く含まれていたことを突き止めている。
確かに製紙会社の本業の先行きは安穏としたものではなく、デジタル化による紙離れや、人口減少によって、今後の見通しは容易ではないというのは分かる。しかしこの件の問題はそこにはない。
この製紙会社に対し、戦力でないと考える社員をリストアップし、退職を勧めるよう提案していたのが大手人材会社だったことだ。ミスマッチ社員やパフォーマンスの低い社員に辞めてもらうことができれば、経営体質を強化できるとアピール。業績が上向いているときこそ退職金を割り増すなどして退職を勧めることが有効だとしていたのだ。
リストアップされた社員は、人材会社が1人当たり60万円で引き受け、職探し支援サービスを提供することにしていた。問題なのは、この時、人材会社に支払われる資金の一部に、国からの助成金が流れ込んでいたことだ。
本来、職探しを支援するはずの人材サービス会社が、逆に社員に退職を勧めるよう提案することに問題はないのか。しかも国の税金を使って失業を生み出し、自分たちのビジネスにしようとするのは「マッチポンプ」と言わざるを得ない。
こんな性悪のビジネスモデルを考えたのはパソナ会長の竹中平蔵氏だという情報がある。そう、あの竹中平蔵氏だ。
http://buzzap.jp/news/20160222-restructuring-business/
裏付け情報がないため真偽のほどは定かではないが、彼は小泉政権時にも首相の信任が厚いことをいいことに売国奴的な所業を繰り返した(そのため長銀や日債銀、その傘下の優良企業が外資に二束三文で売却され、多数の善良なビジネスパーソンとその家族が塗炭の苦しみを味わうことになった)「実績」があるので、可能性は十分と思える。
先月(3月)の時点では、国は人材会社の業界団体に対し、退職者を生み出すような提案をすることは適切ではないと通知を出しているので、こうした悪行が簡単には広がらないとは思う。
しかし油断してはいけない。こうした「自分たちさえ儲かればいい」という行いが日本経済を縮小させ、景気を悪化させ、日本の社会を短期的な儲け主義に走らせたことを忘れてはならない。大企業の責任ある立場の人は是非、良識を持って、立ち止まって考えて欲しい。