11月8日(土)に再放送された「NHKドキュメンタリーWAVE」は「中国の危険な食品 第1回 安全を求めて立ち上がった市民たち」でした。改めて中国の食品問題の深刻さと同時に、何とかしなきゃいけないと立ち上がる人たちもいることがよく分かりました。
今年7月、中国の食品会社「上海福喜」のずさんな食肉加工の実態が明らかになりました。これは日本をはじめ世界に衝撃を与えましたが、中国国内でも「外資系企業の食品でも安全でないのか」と落胆の声が多く聞かれたそうです。
中国では、これまでもメラミン混入粉ミルク(被害者は赤ちゃんです)、肉赤身化剤、注水肉、ゴミ油と違法食品が相次ぎました。中国には「金持ちは特別食。庶民は毒入りで我慢せよ。」という言葉があるほどです。値段の高い安全食品を買えない一般市民は、不安を抱きつつ危険な食品を食べているというのです。ある意味真実でもあるため、ブラックジョークにもなりません。
第一回でスポットを当てるのは、立ち上がった市民NGOです。市場での抜き打ち検査(役所のではなく、商品を買って自主的に大学に検査を依頼しているのです)や、レストランへの衛生管理指導など、地道な活動を続けている姿が映されていました。しかし人々(農家、流通関係者)に染みついた利益最優先の前に、思うような成果は上がっていないことも事実のようです。
出稼ぎ小作農が耕して都市の市場に出荷する農地にNGOの男性が出掛けて、実態を調査していました。化学肥料を使い過ぎているために微生物が死に絶え、土地が痩せてしまったため、余計に化学肥料に頼らざるをえなくなっています。農薬を数種類混ぜてふんだんに使っている(これだけでも危険)だけでなく、中国でさえ製造中止にしている毒性の高い農薬を使っていることも分かりました。指摘されても使い続ける姿には呆れました。
このNGOの調査で分かったことですが、中国の野菜で最も残留農薬が多いのはチンゲン菜だそうです。葉野菜は虫に食われやすいので、農家が余計に農薬を振り掛けてしまうのです。温水でしっかりと洗わないと危険なほどです。
無農薬栽培を実践している農業起業家が上海の住宅地に無農薬野菜を売りに行った様子を映していましたが、普通の野菜の5倍もする値段の、しかも虫食いだらけや姿形がいびつな無農薬野菜を買ったのは外国人駐在員ばかりで、半分以上が売れ残ってしまいました。この農業起業家に雇われて作業を手伝っている近所の農家が「予言」した通り(小生も予想していました)、無農薬野菜でも見掛けが悪いと売れないことも事実なのです。
市民の意識も低いままですし、確かに5倍という値段差は大き過ぎます。言い換えれば大半の野菜は農薬をまぶし過ぎているために虫も寄り付けない状態にしているから手間がかからない、だから安過ぎるのです。本来ならば大幅に農薬を減らし、ちょっと手間を掛けて虫が食わないようにすべきなのですが、儲けのためなら他人の生命・健康を危険に晒すことなど何とも思っていないのが中国の農家の現実なのです(実は日本の農家だって最近まで似たようなものだったと思いますが)…。
中国市民が第一にすべきことは自衛のために野菜をよく洗うことなのでしょうが、同時に農薬が少しでも少ない野菜を選ぶため、生産者が分かっている野菜を買うべきです。そうした市場の圧力しかこの問題は解決できないと思います。
そして日本人消費者のできることは、中国の普通の農家が作った輸入野菜は決して買わないことです。日本企業が減農薬栽培を指導・管理した作物しか日本市場には入れてはいけないと、中国の生産者に対し断固たる姿勢を見せる必要があります。