11月15日(土)に放送されたドキュメンタリーWAVE(NHK)は「中国の危険な食品」シリーズの 第2回、「 安全をどう確保するのか ~生産現場の格闘~」でした。直前に観た、『クロスロード』(11月15日放送)での無農薬野菜栽培の川田農園の奮闘ぶりと併せて考えると、興味深いものでした。
先日の第1回に続き、今回のドキュメンタリーWAVEは中国における食品生産現場に密着しました。一大野菜生産地である山東省で、「輸出にも耐える安全な野菜つくり」に取り組む農家の様子を追いかけていました。
先頭に立つ蒋忠利さん(33)は、現地で「放心野菜」といわれる安心できる野菜つくりを目指していますが、父親が反対し、先祖代々の農地を使わせてくれません(仕方ないので蒋さんは村から借りた農地で取り組みを始めました)。父親は稼げない中で数量を上げるために農薬を大量に使わざるを得ない実状を身に染みて分かっているため、息子が成功するとは思えないのです。
息子である蒋さんは都市の人々が食品の安全を重視するようになっていることに気付いています。豚糞など有機肥料を使った高品質の野菜を、生産組合を立ち上げ、周囲の農家全体で作れば、競争力が付きブランド化も期待できると考えているのです。蒋さんの野菜つくりの取り組みには近所の人たちも期待しており、割安な手間賃で協力しています。
とはいえ手間も掛かり、有機肥料で土地を超えさせるところから始めるのですから、確実にコストは増えます。そして数割の作物は虫食いにやられます(川田農園でも半分程度の野菜は虫に食われるそうです)。消費者アンケートでは半分の人が無農薬なら20%までの価格高でも買うと答えていましたが、さて実際の行動はまだまだ分かりません。消費者の意識が本当に変わればいいのですが…。
中国だけでなく世界が注目する試みですから、何とか蒋さんの無農薬野菜事業が立ち上がることを期待したいものです。
番組後半では、食肉業界での動きを追っていました。日本の畜産技術を取り入れ、日本人好みの肉質を目指して改良を続ける動きが注目されているのです。番組では、輸出用の高品質な牛肉に挑戦する食肉会社を取材。ここは食品の信頼性を高めるため、外部見学者に公開されているそうです。
少なくとも映像で見る限り、衛生管理や音頭管理など、非常にきちんと管理されていました。日本での食肉加工工場と変わりません。心地よい音楽を聞かせながら、牛が自動マッサージ機に身を寄せる姿や、日本の農水省検査官がほぼ毎日検査にやってくる様子も映されていました。これなら安心です。日本への輸出が年10%の成長率というのも納得です。
それにしても、ここの牛肉を使った焼き肉レストランの食事代が一人当たり15千円というのは高過ぎますが…。