メタンハイドレートに賭ける男たち

ビジネスモデル

5月30日に再放送された「夢の扉+」は「燃える氷を日本のエネルギーに!」と題して、メタンハイドレートの海洋産出に、世界で初めて成功した日本の開発チームの姿を伝えた。資源量調査の佐伯龍男、環境調査の中塚善博、そしてフィールド開発の山本晃司の3氏である。

メタンハイドレートは、天然ガスの主成分・メタンと水が結合して結晶化したもの。“燃える氷”とも呼ばれる天然資源で、深海の地層などに存在する。日本近海には「国内天然ガスの年間消費量100年分」のメタンハイドレートが眠るとの推計もあり、国産資源開発に期待が高まるが、実際の産出には幾多もの壁が立ちはだかる。

まずメタンハイドレートがまとまって存在する地層がどこにあるのかが分かっていなかった。資源量調査のリーダー・佐伯は、これまで油田開発に経験を重ねてきた。彼は愛知・三重沖の海底にある「お椀型の地層」に目をつけた。それは石油や天然ガスが集まる形状であり、事実、そこからメタンガスが大量に発生することが確認された。「濃集帯」発見の法則を確立したのである。

しかしその場所は優良な漁場。そのため中塚は、メタンハイドレートの産出が、生物や地層に与える影響を徹底的に調査。その結果、万一メタンガスが漏れたとしても深海の冷たい水と水圧で氷になると評価された。プロジェクトにはGOが掛った。

次は、土中に押し固められたメタンハイドレートを取り出す技術の確立だ。山本らによる2年におよぶカナダでの陸上実験。日本が世界に先駆けて、メタンガス産出技術「減圧法」が確立した。

ついに皆の想いを背負い、フィールド開発のスペシャリスト山本らが、掘削船「ちきゅう」に乗って大海原へ向かう。山本はビデオカメラで全てを記録した。2カ月にわたる船上生活。海面下1300メートル(海面から見るとスカイツリー2つ分掘ることになる!)の掘削。全てが過酷な挑戦である。

作業準備ができたところで強い嵐が来る。「ちきゅう」と掘削パイプの間はつながれており、悪くすれば折れてしまう。嵐の中での作業はまさに「天に祈る」ものだ。夜が明け、嵐が去る。何ともドラマチックである。午前5時40分、パイプの中の水が抜かれ、メタンガスが湧きあがるのを待つ。減圧開始から4時間、海底から取り出されたガスに火が着いた。

プロジェクト発足から12年、悲願達成のニュースに日本中が沸いた。5年後には商業化も目指せるという。国民みんなが期待を寄せる技術である。日本には地熱が最有力だという小生の持論は変わらないが、それだけで全て賄える訳ではない。メタンハイドレートの産出で日本の国産エネルギー資源が十分確保できるようになればこれに勝るものはない。