プロと若者の真剣なセッションは観もの

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年末近くになって風邪をひいてしまい、そのせいで溜まった仕事を細切れに片づけながらなので、どんどん録画が溜まってしまう。とはいえその合間を縫って面白そうな番組を観ている。幸いにして年末のバラエティ番組には興味がないので極端には増えてはいないが…。

そんな中、11月28日に放送されたNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」のスペシャル版「10代 VS.プロフェッショナル 弟子入りスペシャル」の回は特に楽しかった。3組の高校生グループがそれぞれ違った大家に短期間「弟子入り」的に見習いする趣向だ。
http://www.nhk.or.jp/professional/2016/1128/index.html

一人目のプロは当代屈指と言われる天ぷら職人・早乙女哲哉氏(70)。料理人志望の佐藤花菜子(18)と、灘高生の中野誠大(18)の両名が、1か月弟子になる話だ。初日、早乙女氏が2人に働く際の心構えを伝えた際の「修業は、魚をさばくとかそういう技術を覚えに来るんじゃなくて、我慢を覚えに来るもの」という言葉は重いものがあった(実は最近のカンブリア宮殿で菊の井の主人が「単に我慢させる修行は意味がない」と仰っていたのも納得できたので複雑だが)。

若い2人がどれほど真剣に受け止めたかは分からない。しかし天ぷらを2階に運ぶ仕事をひたすら繰り返す1日に中野君は早くも心が折れかけたようだが、思い直して接客など自分ができることで工夫をしていた。そして「安易に料理人も興味あるなんて言えない」と自分の頭脳を活かす方向に生きる覚悟を決めたようだ。そしてふだんから料理店でアルバイトをしている花菜子君には、早乙女氏はまかないで食べるキスの天ぷらを作らせる。当然ながら失敗した後、懸命に練習して修業最終日に早乙女氏に、自分の天ぷらを振る舞おうとする。結局、緊張しすぎたのか途中で失敗し断念してしまうのだが(これが残念だが)、若い人の挑戦心は心躍るものがある。

2人目のプロは、“世界一清潔な空港”羽田の清掃員・新津春子氏(46)。彼女の元に弟子入りしたのが、上村さや香(17)、砂川桜子(17)、瀧堅介(18)の3人。しかし掃除洗濯自炊を自分たちの手でやったことがない3人は洗濯機の使い方すら分からず、なんと翌日には全員寝坊し1時間遅刻するなど、まったく不甲斐なかった。しかも女の子の一人は2度目の寝坊&遅刻までしてしまう。共同生活なのに他の2人も置いてきぼりするなんて、とにかくこの3人は気合が入っておらず、ひどかった。

最後のプロが、ヒットメーカー編集者・佐渡島庸平氏(37)。弟子入りしたのはクリエーター志望の10代4人。それぞれ作品を作り、良いものが生まれればデビューさせることになっていたが、初日に4人の作品を見た佐渡島氏は「今の作品だとプロにはほど遠い。君らは準備ができていない」と叱った。そして弟子たちに、毎日作品を作ってSNSで発表することを課した。高校生とはいえ甘やかさないのは正しい。

「プロの作家は決して生まれつきの才能でヒットを生み出しているわけではない。24時間作品のことを考え抜き、自分の感情や考えをさらけだし、絞り出してこそ名作は生まれるのだ」と佐渡島氏は言う。「物語は基本的には型なので教えることが出来る。だけど教えられない“才能”というものがあって、それは“最後までやりぬく”、“こつこつと続けられる”、その努力ができることなんです」と。彼はこのことを教えたかったのだ。

そんな中、広島からマンガ家デビューを目指してやってきた松田悠希君(17)が自分の家族関係を描いたマンガ作品を持ってきた。多感な17才の気持ちをさらけ出した作品に佐渡島氏は「初日に見たマンガより、1万倍おもしろい」と評し、真剣に向き合っていく…。この後の彼女の成長、そして他の3人の成長も期待したい。