フェイスブック広告に見る傲慢さ

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ターゲティング広告というものをご存じでしょうか。ユーザーやコンテンツの情報を分析して、ユーザーにとって適切と思われる広告を配信するものです。

ターゲティング広告では、PCやスマートフォン・タブレットのブラウザごとのクッキー上に発行されるIDに紐づいて蓄積される情報(サイト閲覧履歴等)や、スマートフォン・タブレットのOSが発行する広告識別子に紐づいて蓄積される情報が使われています。

ユーザーのメリットとしてよく挙げられるのは次のようなものです。すなわち「ユーザーは、ターゲティング広告により、自分が興味関心のある広告に接する機会が増えることになり、また興味の薄い広告を目にする機会が減ることになります。また、広告効果の高いターゲティング広告は、媒体社の収益向上に寄与し、より良いコンテンツ提供が期待できます」といった感じです。

デジタル広告の2大巨頭とされるのが米アルファベット(グーグルの親会社)とMeta(フェイスブックの運営会社)です。昨年度の売上は前者が1,825億ドル(約20兆円)、後者が860億ドル(約9兆4千億円)と膨大なものですが、その大半は、貪欲に集めた個人情報をターゲティング広告向けにアレンジしたことで稼ぎ出している訳で、ぼろ儲けとすら言えるものです。

しかし今、ユーザーが望まないデータ追跡を制限しようとする動きが広がっており、欧州や米カリフォルニア州では、GAFAなどのテック巨人によるデータ収集と利用を人々が拒否しやすくなる法律が次々と制定されています。

そのためグーグルは同社のウェブブラウザChromeからサードパーティのクッキーを排除する計画を明らかにしています。アップルは、ユーザーがクッキーによる追跡を拒否する選択肢をとりやすくする計画に取り組んでいます。そのせいで企業がターゲティング広告を打つのはどんどん難しくなる見込みで、もしかするとデジタル広告業界は一大転換点を迎えつつあるのかも知れません。

例えばフェイスブックで広告を出す中小企業はますます増えつつありますが(というのもデジタル広告の中ではフェイスブック/インスタグラムのターゲティング広告が最も精度が高く、費用対効果も高いと考えられているからです)、アップルの上記の方針変更を踏まえてかなり多くの変更と制約を余儀なくされています。この一大変更がこの春辺りから始まっています。

大半のフェイスブックユーザーにはまったく気づかれないことなのですが、ビジネスとしてフェイスブックを利用している企業や店にとっては非常に大きなインパクトが生じているのです。

しかもその対処法の説明や個々の対応についてフェイスブックがビジネスユーザー(広告主など、フェイスブック上にビジネスページを設けて活動しているユーザー)に指導する際の説明などは、「これ以上分かりにくく、または不親切にはできないだろう」と思われるほど、実に下手くそなものです(多分、ユーザーにとって分かりやすくしてあげようという、ごくわずかな親切心がMeta社にはないのです)。

そのため自ら直接フェイスブック上で管理し広告を出しているユーザーはもちろん、そうしたユーザーの代行者として運用を受託している広告代理店の連中もまた、かなり混乱を続けていました(中には最近まで間違った対処を続けていて成果がまったく上がらなかった業者もいたようです)。

しかもフェイスブックのAIによる自動監視機能はこうした戸惑った利用者の動きを「不正の可能性あり」とみなしてアカウント停止を宣告することがままあるのです。まぁ迷惑なAI機能ですが、そもそも説明の問題点を色々と指摘されながらも一向に改善しようとしないMeta社の姿勢の問題が一番大きいのではないかと思われます。

残念ですが、この傲慢さに満ち溢れている会社の仕組みを使うのが今のところ一番合理的なのですから、世の中って最適にはなっていませんね。