2夜連続で『バーゲン・ジャパン 世界に買われる“安い日本”』という番組がNHKの「クローズアップ現代」で放送されました。御覧になった方も少なくないと思います。
https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/episode/te/L16GXJGNJY/
https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/episode/te/VGR5ZJG2YK/
世界的に“お買い得”と見られる日本の「不動産」と「人材」に、いま外国人からの買い注文が殺到している実態を伝えてくれました。
人によっては「ニッポンの価値ある資産が買い叩かれている」と憤慨するかも知れませんが、私は違います。「この円安を生かして収益アップを図るチャンスだ」「優秀な労働者は工夫のない日本人経営者の下から逃れるチャンスだ」と考えます。
日本国内の消費者市場を見ているだけだと、「ずっとデフレ傾向が続いていたのが、アベノミクスやインバウンド景気で少しましになったところにコロナ過が突如として現れて、日本経済がぼろぼろになったところにエネルギー危機と円安による物価高の追い打ち」といった具合に悪い面ばかりが目立ちます。
でも物事にはいつも両面があり、実態はそんな悪いことばかりではありません。コロナ過の環境でさえオンラインビジネスと通販業界には追い風でした。今の円安局面ではトヨタや村田製作所などの大規模輸出メーカーだけでなく、農産物などの一次産物の輸出業はもちろん、国内でビジネスをしている不動産業や各種の仲介業にとって「外人買い」の恩恵を実感する局面が結構あるようです。
私がプライベートで知っているだけでも、特に米国人の日本駐在員の実質的給与が大幅に底上げされており、彼らは一段格上の買い物をできるようになっています。だから外人駐在員向けビジネスは今、隠れた「儲かるビジネス」です。また、再開されようとしているインバウンドビジネスはオミクロン株の流行で当面は怪しいですが、中長期的には十分有望です。
私自身も相当昔ですが円安に振れた際に結構、外資系企業向けの仕事をさせていただきました(主に日本市場への進出、国内企業の買収のための仲介や企業価値評価など)。このタイミングで日本市場進出を目指して日本企業や日本の場所・人材を確保しようとする動きが再び大きく巡ってくることは明白です。
問題は、それを迎え撃つ日本企業(特に中小企業)に元気と戦略性がないことです。消費者のデフレマインドがとっくに切り替わっていることにも気づかずに相変わらず低所得層向けの低価格ばかりを狙い、そのために人件費を削ることばかりに心を砕き(この傾向は中小企業ばかりか中堅・大企業の一部でも残っています)、しかも海外市場なんて頭の片隅にもない。完全にズレています。
産業にもよりますが、まず日本企業や国内消費者ばかりを念頭に置かず、外資企業や外人消費者も狙うように頭を切り替えるだけで世界の見え方は変わってきます。大々的な輸出の仕組みを自社だけで組み上げるのは大変ですが、他社との協業や既存の仕組みの利用で幾つもオプションは増やせます。例えばモノづくり・物売り事業なら越境ECサイトをどう使えるかを真面目に考えるべきですし、国内にいる外人消費者や外資系企業への売り込みも有意義です。
そういったアグレッシブな経営戦略を考えられない経営者は引退すべきです。さもなければ彼らの下にいる部下は、優秀な順に外部からの誘いに応じて辞めていくでしょう(辞めていく彼らも荒波に飛び込んでいくのです)。 もっとも、そうした「戦略性なしに惰性で続けている悪い中小企業パターン」に陥っている企業が顧客と従業員に見放されるのは、日本社会全体としては全体最適に近づくための「神の手」の裁きなのかも知れません。