10月になって明るいニュースが欲しいと申し上げてきたのに、そしてロシアによるウクライナ侵攻が既に泥沼化しているのに、実際にはもう一つの戦争が始まりました。イスラエルによるガザへの大量空爆が連日続き、地上侵攻も始まろうとしています。
ガザを実効支配してきたハマスは、軍事組織であると同時に行政と福祉の機能も持つ特異な集団で、ガザの住民からの支持には根強いものがあるとされています。今回の大規模なテロ襲撃は世界一といわれたイスラエルの情報機関・モサドの情報網を見事に欺き、大成功しています。
しかし大きなテロ成果の後、イスラエルからの報復がその数倍返しになることは過去のパターンによって実証済です。今我々が目撃している大規模空爆や、地上侵攻によるハマスの徹底的壊滅を目指すイスラエルの動きをハマスが予想しなかったはずはありません。
中東専門家と呼ばれる人々は、今回のハマスのテロ事件の動機を「周辺のアラブ国家がイスラエルとの関係性を樹立しようという動きを見せていることへの危機感」だと指摘していますが、私にはハマスによる大掛かりな「組織的自爆テロ」ではないのかという疑念が拭えません。
つまり、「怒りに狂ったイスラエル軍がガザ住民を大量虐殺する」ことを見越し、イスラエルの残虐性と米国の二枚舌振りをあぶり出し、世界(特にアラブ・イスラム世界)からの本気の同情と支援を集めることを狙っているのだということです。
自分たち・ハマスの大半が殉教者となっても構わないので、憎っくきイスラエルへの憎悪と嫌悪を煽るための大がかりな「組織的自爆テロ」だと感じるのです。
テロリストならではの常軌を逸した発想ではありますが、イスラエルはまんまとその策に乗るのではないでしょうか。これまで世界のユダヤ人ネットワークが様々なメディア工作を通じて作り上げてきた「ユダヤ人=民族虐殺の被害者」という像が大きく棄損するでしょう。
しかし理不尽なことに、ハマスの殉教者気取りの一番の犠牲者となるのは無辜のガザ住民たちです。住民への福祉で小手先の人気取りを図ってきたけれども、ハマスの本質的関心はやはり住民の安全・安心ではないのです。
今の状況を客観的に見る限り、当面の停戦も虐殺も避けることは難しいとは思います。でもいずれイスラエルも振り上げた拳をどう下そうかを考えるタイミングが来ます。是非、日本政府には遠からずの和平に向けての仲介者に立候補して欲しいと思います。
この地に強烈な利害を持ち、戦後の経済復興への貢献力を持ち、何よりイスラエルからもパレスチナからもその信義を信頼されている存在は、日本を置いて他にはないからです。