ネット販売の巨人・アマゾンの「体力勝負」戦略

ビジネスモデル

米アマゾンがSECに提出した年次報告書によると2012年における日本での売上は78億ドル(直近のレートで約7300億円)と、日本でのネット販売業では最大であることが判明した。以前からアマゾンの躍進振りは伝えられていたが、それが証明された格好だ。

同社の何が凄いのか。2月24日(日)のNHK「Biz+サンデー」ではその秘密をかい間覗かせてくれた。番組で映していたのはその巨大な物流センターの内部。業者が預けたりメーカーから仕入れた品物を発送前に一時的に在庫し管理するのに、いちいち商品カテゴリーごとに仕分けしたりはせず(その時間が惜しいから)、商品バーコードに続けて置き場所のバーコードを読み取る。それだけでコンピュータでひも付けされる。その品に注文があって探す際には、ピックアップ係のうち最も近くにたまたまいる人間に、コンピュータから自動的に指示が飛ぶ。

とにかくコンマ数秒でも短く作業が完了するよう、従業員からも「こうしたほうがよい」という提案が常に上がってくるそうだ。日常的に「カイゼン」が行われているのである。アマゾン・ジャパンのチャン社長が自社の戦略として「品揃え、低価格、利便性」の3つを常に追求することを挙げていた。アナリストたちが解説していたようにこれは小売の王道であるが、それ以上に強者の戦略、Operational excellence leadershipの戦略だと感じた。

その戦略追求のために彼らはITと物流を自ら手掛け、多大な投資をしている。そしてどんどん効率的になっているのである。しかも送料無料などを仕掛けている。競合の通販業者からすると体力勝負に巻き込まれて非常にやりにくいはずだ。「どこまでやるんだ、アマゾンさんよ」といった気分だろう。この戦略は当初アナリストたちから批判の的となっていたが、ドイツ証券アナリストの方は「今では株式市場もその戦略を理解し、好意的に評価している」と解説していたのが印象的だった。一見、死角がないようなアマゾンだが、こと日本に関してはまだ発展途上であると小生は感じるが、如何だろうか。

ちなみに番組の中では、アマゾン・ジャパンの社員が地方の業者のところまで足を運んで特産品を売ってもらうよう働き掛ける営業活動が紹介されていた。一昨日このブログで、「セコムの食」が同じことをしているのを(ただし違和感も)紹介したが、まさに小売の巨人が地道に営業活動をしているのを観て、小売の競合たち(特に楽天)は油断ならないと感じたのではないか。

米国ではまさに小さな地方業者がアマゾンの仕組みを使ってロングテイルの商売を拡げている。日本では米国から5年ほど遅れる感じでオンライン通販市場が拡大しているので、そろそろ日本もそうした段階に突入しようとしているのだろう。地方の零細業者も全国に販路を拡げる手段がどんどん拡がっているのだから、面白い時代になってきたものだ。