ニッポン企業の逆襲には戦略と意地が必要だ

BPM

8月11日(日)に放送されたNHK BS1「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオⅡ」は製造業の逆襲シナリオを考える、シリーズ第二弾。時間がなくて、録画したままになっていたのを観た。NHKスペシャル「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオ」の未公開映像をふんだんに盛り込んだ企業ルポだった。

第1部は「戦略編」。ターゲットを徹底的に絞りこむことで復活を果たしたマツダ、中国進出に大成功して世界トップに躍り出たダイキンの2社を採り上げていた。

ダイキンのケースは本当に戦略の凄さである。当時、ダイキンの株を持っていたのでよく分かるが、中国進出するために虎の子のインバーター技術を中国最大のメーカーに供与するという大胆な策は、他の日本企業の度肝を抜いた。そして同社はその技術のブラックボックス化を守りながら中国進出も大成功したのである。

一方のマツダは(戦略以上に)戦略実行力で成果を上げた例である。

マツダはロータリーエンジンなど独自の優れた技術を持ちながら、バブル時代の身の丈を超えた拡大戦略が仇となって銀行管理下に陥り、フォード傘下で、フォードの苦手な小型車を上手に造れる地域子会社として、都合よくつかわれてきたきらいがあった。それでも超大手グローバル企業グループの一員として、技術を磨くことで居場所を確保し続けた。しかしリーマンショックで財務に苦しむフォードがマツダ株を手放し、再び自由を得た近年、マツダはヒット作を飛ばし続けている。

マツダの何が変わったのか?表に現れたものでいえば、ターゲットを徹底的に絞りこんだ製品のデザイン・性能・コスト間のバランスのよさであり、開発スピードである。それを可能ならしめたのが、マツダの「一括企画」という組織改革であったという。開発部門や生産部門など異なる部署のメンバーが、ひざ詰めで一体化しながら自動車づくりを進めていくというスタイル。これ、もともと日本のものづくりの強みだったし、ホンダの「ワイガヤ」、日産のCFTと同じである。

例えばハイテンの使用度を上げるのに、生産技術者の意見を取り入れて開発技術者が設計変更を行ったというエピソードを番組で紹介していた。当初、生産技術者の人たちは遠慮して、なかなか提案できなかったということだ。この遠慮というのは、「へたに他所の部門を批判すると、次はこちらのミスや怠慢を指摘されかねない」という心理である。それこそ官僚や大企業病の縦割り主義である。

こうした部署横断型チームの成否を決するのは、各メンバーが出身部署の利益代表にならず、プロジェクト成功のために何が大切かという1点から行動できるかどうかにかかっているということはよく指摘される。頭で分かっていても、実際には難しいのである。

小生のような外部の人間が入っていて、キーマンをけし掛けるような動きをする場合はいい。そんな「異物」の触媒が存在しない場合、どうすればいいのか。結局、マツダの「過去の習性」を変えたのはトップの危機感であり、現場の人たちの「また負け犬になるのはご免だ」との思いが、「これではいけない」と思わせたのではないか。そんな経験をしたことがある人間には、その感覚がよく分かる。