ドラマ「メイド・イン・ジャパン」が教えるもの

グローバル

1月最終週から3週連続で放送された、ドラマ「メイド・イン・ジャパン」を録画でまとめて観た。脚本・井上由美子、原作はないことになっているが、「メイド・イン・ジャパン 驕りの代償」(井上久男著)が発想のベースになっているとは思う(内容は直接には無関係)。

あらすじは次の通り。日本を代表する家電メーカー・タクミ電機の業績が悪化し、倒産の危機をのりきるため、会長が社長(会長の息子)にも内緒で再建戦略室というプロジェクトチームを結成する。リーダーは元営業部長・矢作、メンバーは財務・製造・法務などから寄せ集めた「現在、つま弾き組」である。数千億円の出資を検討してもらうべく提携候補(30社ほど)に打診するが、ドイツのメーカーを除き全て断られる。その独社の提携条件は「現会長と社長の退任」だけだが(「そんな甘い…」とツッコミをつい)、取締役会での会長自らの緊急動議にもかかわらず流れる(「そんなアホな」と思ったが、意外と実際にもあるかも)。

代わりに取締役会で対応策として求められたのは、同社の命運を握る自動車用電池の技術を盗用してヤマト自動車との取引を奪った中国メーカー・来生(ライシェ)を提訴することだった。その技術は元々タクミの技術者で矢作の同期で親友の迫田が開発したが、矢作の進言により開発を凍結したものだった。迫田は退社し、来生に拾われて製品として完成したのだ。タクミの提訴により契約を躊躇するヤマトに直談判すべく、迫田を先頭に日本に乗り込んだ来生の一行は自らの正当性を訴える記者会見を開く…。ここからの展開は「それはないだろう」クラスのものだった。

それはさておき、このタクミ電機のモデルは、幾つかのブログで囁かれるような「パナソニック、シャープ、ソニー」ではないかも知れない。会長・社長が親子で、電池に将来を賭ける家電メーカー。しかも最後に中国企業との提携に命運を賭けるときたら、むしろパナソニックに吸収された、今は亡き三洋電機(Sanyo)を思わせる設定である(そうなると行く末は不吉だが)。

このドラマのキーワードは「技術流出」である。日本の大手家電メーカーが、長引く円高やアジアの競合との戦いに敗れ、数度にわたるリストラを繰り返し、多くの技術者の流出を招いた。その中でも実績のある人たちは好待遇で主に韓中の競合企業に引っ張られ(最近は仙台のアイリスオーヤマが積極的だが問題視はされない)、様々なレベルの技術が持ち出されたことは今や常識である。

確かに中には違法な盗用もあったろうが、本ドラマにもあったように、そうした技術者の頭脳や身体にしみ込んだノウハウを応用して改めて開発された技術も少なくなかったのではないか。日本の技術者がどんな心情で、韓中の競合企業のお世話になるという決断をしたのか(辞めた技術者の次の職場に心を砕かないというのは、経営陣や人事担当者たちがあまりに迂闊だったと言わざるを得ない)。そして今も日本の技術者たちが日中韓台の企業に分かれて戦っており、「メイド・イン・ジャパン」とは何だろうと考えさせられる。