中国の景気減速による“チャイナショック”が、対中輸出に依存する韓国経済を直撃していることは知っていた。しかも中国市場における現地(中国)資本企業との競争が激しくなっていることも知識としては知っていた。
しかしその実態のすさまじさは、4月10日に放送されたNHKの「ドキュメンタリーWAVE」で観て初めて分かったような気がする。その日の放送タイトルは「“チャイナショック”と闘う~韓国 経営者たちの苦闘~」。生き残りのため新たな市場開拓に奔走する、経営者たちの苦闘に迫っていた。
韓国の輸出額の4分の1が中国向け。それが今年2月には20%近く急落し、多くの企業がリストラや廃業の危機に直面しているとの情報はウェブサイトなどで垣間見ることがある。
番組では、スマートフォンや液晶テレビの電子部品を製造する中小企業に密着取材し、生き残りを図るため、技術開発などで新たな市場開拓に奔走する経営者たちの苦闘の日々を映してくれた。
その中の1社。かつてベンチャー企業の騎士と言われたトレイス・イクァング社長は大手メーカーの下請けとしてスマートフォン部品に付ける特殊な部品を作ってきたが、チャイナショックで売上が最盛期の4割減。予備校・スマートジョンイル学院のオンライン予備校向けにイクァング社長はタブレットを提案。ペン入力システム用にタブレットの線の太さを変えられるオリジナルの技術をもとに、日本・大阪の商社にも提案するなど必死だ。
一方、韓国オリオン・キムセオン社長はテーブルモニターを売り込みに、シンガポールの大型モニター専門の商社を訪れる。ベトナム、香港など6社でトップセールスを行なったが、色よい反応がない。市場の競合と同じ、低価格を追求するのか悩んだ結果、キム社長は「4Kや40本指で同時にタッチできる商品を絶対に完成させる」と高機能路線を徹底することで生き残りを目指す覚悟を社員に宣言した。
従来の韓国企業は日本企業の真似をして、価格競争で日本企業を蹴落として世界市場で成長してきた。しかし今度は中国企業などから追い上げを食う番だ。そのとき、自らのオリジナル技術がどれほど独創的で魅力的なのかが問われる。多くの韓国企業にはそれほど時間が残されてはいない。