ジャパネットたかたに見る、代替わりの難しさ

ビジネスモデル

7月4日(木)にBSジャパンで再放送されたガイアの夜明けは「生き残りを賭けた…新通販戦争」というタイトル。主に採り上げられたのは、ジャパネットたかた、オークローンマーケティング(ショップジャパンの運営企業)、ニッセン。いずれも急拡大するネット通販に押され、その危機感は大きい。

ジャパネットたかたの方式は、その日の販売商品を絞り込み詳しく紹介する提案型のテレビ通販。毎日の生放送のための直前打ち合わせ時に、当日の天候などを考慮して商品ラインナップの手直しを行なうこともある。撮影スタジオやコールセンターなども自営し、細かなケアが出来るのも魅力の一つ。

高田社長が今最も力を入れているのはタブレット端末。デジタル家電を敬遠しがちな高齢者に対し、スタッフを自宅に派遣してすぐ使えるよう設定を行ない、さらに無料レッスンまでつけるサービスを展開。好評である。ユーザーの一人は「(家電量販店より)沢山の選択肢よりも1つしかないといわれたほうが私達の世代にはいい」とジャパネットの良さを語った。

こうしたシニア層の支持を受けて同社は成長してきたが、ここ2年連続で減収減益。昨年にはテレビ通販の草分けである日本直販が破綻。原因はインターネット通販の急成長。

巻き返しを図る高田社長は、昨年六本木に巨大なスタジオをもつ東京オフィスを作り、東京進出は長男の旭人氏に任されていた。番組ではその父子対決の様子として、同じジューサーをどう売るのかの視点の違いを捉えていた。佐世保からは高田社長がジュースの美味しさを強調する戦略で、2時間後の東京では(作戦会議の結果)栄養価の高さや健康効果を強調した。結果は息子・旭人氏の完敗。さすが高田社長のセンスは凄い。

その後、旭人氏は父を見返すため、とっておきのアイディアとして、これまで単体で販売していた赤外線調理器の「ザイグル」を、高級食材とセットにして販売する新しい試みをスタート。試食でもスタッフ皆から好評だった三元豚ベーコンとのセットで販売が行なわれたが、注文は思いのほか伸びず、販売目標の2割程度。東京オフィスに高田社長が訪れ、社長はすぐにスタジオに。今年過去最高益を出さなければ社長を退くと宣言している高田社長は、ザイグルについて「あの注文数の2倍くらいを1回で出せる制作力と司会力を…」と息子や社員達にハッパをかけた。つまり商品パッケージのアイディアはよいが、演出力が足らないと言っている訳だ。

このエピソードが表しているのは代替わりの難しさだろう。旭人氏は頭脳優秀で能力が高い感じだ。しかし何が、どう伝えたら売れるかは理屈だけじゃない。センスと表現力という厄介な代物が大きなファクターを占める。これが高田社長には突出してあるからこそ、他社でできない同社独特のビジネスモデルが成立しているのである。この能力を旭人氏が身につけることができるのか、それとも同社の(高田社長に依存した)ビジネスモデルを今後大きく変える必要があるのか。

正解は後者であると思うが、これだけ大きくなった企業がその成功要因である唯一絶対のビジネスモデルをスムーズに変えられた例を、小生は寡聞にして聞かない。前者なのか、後者なのか、いずれを選ぶとしても、1年程度で達成できるとはとても思えない。仮に高田社長が今年社長を引退するとしても、会長に留まり、スタジオでの指揮を続けなければ立ち行かないのではないか。