コンサル業界の宿痾(しゅくあ)

ビジネスモデル

つい最近、昔の同僚と食事した際に、色々な情報交換をさせてもらった。その人は外資系の大手コンサルティング会社を幾つか経由したのち、今のファームに移っても相変わらず活躍され、非常に多忙な様子である。間違いなく優秀なコンサルタントだし、人格的にも立派な方として(年齢的には若いが)尊敬している。

その会話の中で、コンサル業界の相変わらずの問題がトピックの一つとして出てきた。一つは「下請け頼り」であり、もう一つは英語とコンサル能力の問題である。

ご多分に漏れず、その人のいるファームもブランド力による営業力があって、時には社内で誰もできないような案件をたまたま取れてしまうことがある。そうなると実際のデリバリー(コンサルティングの実施)の大部分を外注に依存せざるを得ない。PMの力量が十分あれば問題ないが、往々にして経験の浅いPMしか残っていない。

小生自身は年齢の関係でそれほど機会があるわけではないが(40代以下のPMはベテランのコンサルタントを使いたがらないため)、独立個人コンサルタントの多くはこうしたコンサル会社の下請けに入らざるを得ないのが実際の世界である。SI業界でもこの「下請け構造」はよく指摘されるが、現実にPMは大手のほうが優秀なことが多いので、ちょっと事情が違うようだ。

コンサル業界の話に戻る。年収的には比べ物にならないが、実力的には逆転している(個人コンサルタント>大手コンサル会社のPM/サブリーダー)ケースも往々にしてあるという(先日Insight Now!のミーティングで聞いた限りでは、そのほうが圧倒的に多い模様)。つまり経験が浅く少々頼りない大手コンサル会社のPMを外注の個人コンサルタントが安い日当で支える構造だという。これがクライアントにとって望ましい状況でないのは明らかだろう。

もう一つはもっとプリミティブ(初歩的)である。大手コンサル会社が外資系の場合、英語スキルが出世の重要な要素である。マネジャーからシニアマネジャー、さらにはパートナーになる過程において外人幹部との会話ができるかどうかは、大きな鍵となる。その能力もクライアントが外資系や海外ロールアウトの案件では役に立つので重要であることは否定しない(かくいう小生もそのスキルは売り物の一部である)。

しかし現実には、必ずしも英語スキルとコンサル能力は両立しない。残念ながら多くの外資系コンサル会社のPM(マネジャー/シニアマネジャークラス)には、英会話能力は優れているが、コンサルとしては「使えない」連中が少なくないという。この問題は、件の「昔の同僚」も口にしていたので(彼が言うからには)、事実なのだろう。

この2つの問題は往々にして同時に現れる。つまり経験が少なく(英語はできるが)能力的にも問題のあるPMに、経験も能力も豊富な個人コンサルタントがいいように使われている構造だ。時にはそのアンバランスがプロジェクトの迷走を招く。クライアントにとっては迷惑な話であるが(ただし目利きができないクライアントにも大いに責任がある)、コンサル業界の宿痾の一つだろう。