“オンリーワン”戦略は徹底すればこそ

グローバル

BS NHKで11月13日(水)に放送された「島耕作のアジア立志伝」は「“オンリーワン”で生き残れ!」と題して、台湾の高級自転車メーカー・ジャイアントの創業者、キング・リュー(劉)会長をフィーチャーした。

現在79歳で、いまだ現役。通勤時に(毎朝自宅から会社まで40キロ!)、レーシング・スーツに身を固め、自社製自転車で快走する姿は若者と変わらない。この人物、台湾で創業した38名の町工場から、一代で世界一の高級自転車ブランドを築いた凄腕(ちょっと見は中小企業のおやじさんだが)。

下請けメーカーから始め、欧州の得意先に取引を切られる危機感から、独自ブランド「GIANT」を立ち上げた。当初は技術力に劣り苦労したが、日本メーカーから技術を、欧州企業から経営を学び、強くて軽いカーボンフレームの量産化に成功するなどした。やがて台湾そしてアジアでの競争に打ち勝ち、遂には高級自転車メーカーに転換。

その戦略とマーケティング手法が素晴らしい。その成功の秘密は、低価格競争に背を向けた”オンリーワン”戦略。他の台湾や中国などの競合メーカーが軒並み、低価格で勝負してくるのに対し、あくまで技術的な差別化を追求し、安売りの販売店とは取引せず、ちゃんとしたプロのメンテナンスができる販売店にだけ卸した。

しかもその価値をマーケティングとしてブランドの高評価に結び付けたのである。そういう高級自転車しか扱わない店のスタッフに対し、どう素材や機能が違うのかを丁寧に説明し、伝道師を作っていったのだ。さらにツール・ド・フランスで4回優勝を飾るなどし、高級ブランド化を徹底して推し進めた。この辺り、部品メーカーのシマノに通じるものがある。

そして高級路線維持のためにはライバルとも手を組む(台湾メーカー連合Aチームの設立)。理論的には分かっていても、なかなか実際にはできないことばかりだ。だがそれを着実にやったからこそジャイアントはナンバーワンになったのだと感じた。