エネルギー転換に悪戦苦闘する中国

グローバル

4月2日(水)に再放送されたNHKのドキュメンタリーWAVEは“PM2.5は克服できるか~エネルギー転換をめざす中国~”と題して、公害への対処とエネルギーの転換に苦しむ中国の姿を浮き彫りにするものでした。最近はこの類が増えましたね。

中国で深刻化する大気汚染。体に悪影響を及ぼす超微粒子、PM2.5は日本にも流入してくるため非常に迷惑がられており、よく報道されるようになりました。

そのPM2.5の濃度がこの冬、中国各地で「計測不可能」となるほど高くなっています。各省政府は「清潔空気行動計画」などを発表、2017年にPM2.5の濃度を20%下げる目標を掲げました。

最大の原因は石炭ボイラー。ある自治体(上海だったと思います)は、市内のあらゆる中小の石炭ボイラーを検査し、排出基準をクリアできないものは来年までに廃止させると発表、電気ボイラーなどへの転換を急速に推し進めています。

その実力行使の様子を映していましたが、店で使っている石炭かまどを止め、取り出し、水を掛けて使えなくしてしまう、といった荒っぽいやり方でした。さすが中国、市民の権利などはありません。

しかし、高価な設備投資と維持費のアップが必要な「エネルギー転換」は、今まで安価な石炭に依存してきた飲食店や工場の経営を揺さぶるものです。同じ熱量を得るのに今までの2~3倍の燃料コストが掛るのですから。中小企業の多くはそのコスト上昇分を価格転嫁できず、利益圧迫となり、なかには廃業を余儀なくされるケースも出てきます。

当然、都会では靴製造やゴム手袋製造など、人手と多量の燃料を必要とする工場は成り立たなくなってきます。すると雇用問題や製品の価格優位性の喪失など、深刻な影響が出るのです。

番組ではある靴の製造工場の経営者親子の葛藤が描かれていました。会長である父親は、オイル循環による新方式に転換するべく多額の投資をしようとします。しかし社長である息子は、薄い利益の事業でそんな高額投資はリスキー過ぎる、むしろ事業を変えるべきと全く違う発想です。そして2人は合意できないまま、新方式のオイルヒーターが導入されますが、オイル漏れを起こし、相当な損失を被ります。

どの国でも「エネルギー転換」にはこのような葛藤が伴うのが産業史の真実なのです。今、中国は安い人件費と燃料費という武器を失いつつあり、急速に「世界の工場」という看板を下さざるを得なくなってきているのです。

一部の日本人には「ざまぁみろ」的な言い方をする人たちもいますが、これは日本も通ってきた道。彼らの苦しみを和らげる方法を日本人が教えることができないものかと思います。