ロシアのウクライナ侵攻開始から約1か月半が経過しました。
ロシア政権内では当初の楽観論(側近がプーチンに吹き込んだと言われています)は吹き飛び、祖国防衛心と西側援助の兵器・訓練により強化されたウクライナ軍の頑強な抵抗に遭ってロシア軍の被害は膨れ上がり、遂にはキーウ(キエフ)包囲による政権転覆というシナリオも放棄したようです。今や何度目かの戦略転換により、黒海沿岸部を封鎖し東部を制圧した上で、停戦交渉を少しでも有利にすることを狙っているようです。
現場の兵士の士気が急速に低下する中、西側の経済制裁により急速に疲弊が進む本国財政が巨額の戦費を支えられなくなる事態を懸念し始めているロシア。あちこちで反転攻勢に出て意気上がる一方で、飢餓状態にあるマリウポリなど東部の国民を人質に取られている格好のウクライナ。どちらも本音ではすぐにも停戦はしたいが相手より先に大きな譲歩はしたくない、そんなぎりぎりの我慢比べです。
さて直接的には火の粉が飛んでこないはずの極東の我が国にも多大な影響が及んでいます。一番目につくのは物価高騰の加速です。この戦争前から新型コロナによる世界的需給バランスの崩れによって物価はじりじりと上がっていたのですが、そこにエネルギーというベース物資の高騰が急速に火を注ぐ格好になってしまいました。いわば国際的な税金がこれからすべてのモノ・サービスに掛かってくるような状況です。
しかもこの戦争で日本の交易条件が悪化することを見越して円安が急速に進行しましたので、原油・天然ガスをはじめとする輸入物価の割増度がさらに進む格好です。さらにしかも、欧州との間の航空便はロシア上空を飛べないので遠回りせざるを得ないため、日欧間の輸出入品のコストは少なくとも10数%程度増大するそうです。そしてお隣・中国をはじめとする新興国はオミクロン株に翻弄されて生産も物流も停滞し、日本市場への供給は極端に細っています。実に踏んだり蹴ったりです。
残念ながらこの戦争が終結するまでは物価は上がり続け、そして多分、終結後もロシア経済が世界から切り離される状況から、数年間は高止まりするでしょう。もちろんこれで世界が同時不況に陥れば物価は反落しますが、その影響をもろにかぶるのも我が日本です。どちらに転んでも空恐ろしい話です。
でも空恐ろしい話がもう一つ。今回のロシアのやり口と成果をじっと観察している中国です。どこがうまくいき、どこでへまを踏んだか、そして自分たちが台湾に侵攻する際にはどうすればいいのか、すべて教訓にしようというのが彼の国の視点です。「武力侵攻は割に合わない、国家の損失だ」という教訓を中国が得られるように、今回のウクライナ戦争を終結させねばなりません。