この夏はオリンピックと共に、様々な終戦前後や戦後の秘話に基づくドキュメンタリーもしくはドキュメンタリードラマが放送された。忙しさのため録画されたものをなかなか観ることができなかったが、少しずつ追いついている。特に人間性そのものに迫る良質な作品が多い。
その一つがNHK BS1で7月23日(土)に再放送された『将校は、砂漠に木を植えた~インドに渡った隼戦闘隊員~』というドキュメンタリーだ。
http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2420449/
戦前、戦中、戦後にかけて、ある一人の人物の生き様を追う。主人公は、比島作戦に参加した陸軍飛行第31戦隊の整備隊長だった故・杉山龍丸氏。祖父は政財界のフィクサーともいわれた杉山茂丸、父は作家の夢野久作である。
名家に生まれた彼は、戦前、陸軍士官学校から陸軍航空技術学校へ転科となり、そこで軍人でありながら戦争中止を訴え、画策する。しかし、その行動が上部に嫌われフィリピンの最前線へと送られた。
レイテ戦において最後まで戦闘機を保持した部隊。日米航空機の生産技術の違い、司令部の目論見の甘さ、様々な不条理の中で、彼は日本の大義を冷静に見つめ闘い抜く。しかし昭和20年3月末、突然フィリピンからの脱出命令が下る。これに従い部下を残して帰国したことが後に、彼に深い悔恨を残す。
戦後、杉山龍丸氏はインドの砂漠緑化にその生涯をかけた。先祖伝来の農園を全て売り払ってまでも。インドの政府や個人の協力を得て、インドの各地にあった砂漠地帯や土砂崩壊の地域を緑化したが、日本の政府や企業などからは理解や協力が得られず、日本ではあまり知られていない。インド、パンジャブからパキスタンまでの国際道路のユーカリ並木とその周辺の耕地は杉山の功績であるとされている。凄い人物だ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%89%E5%B1%B1%E9%BE%8D%E4%B8%B8
戦地で書かれた整備日誌、戦後書かれた手記や書簡をもとに、彼の行動の背景にあった思いに迫った良質の番組だった。