インドネシアの新大統領にジョコ・ウィドド(Joko Widodo)氏が20日、就任しました。「ジョコウィ(Jokowi)」の愛称で知られます。河原のスラム街に生まれ家具屋としてキャリアを始めた新大統領は、地元ジャカルタ市長としての政治手腕から庶民派として人気を上げ、ついにはこの7月の大統領選で元陸軍戦略予備軍司令官のプラボウォ氏を破って勝利しました。そのプラボウォ氏も招いた就任式で、ジョコ新大統領は自らが掲げる改革政策への支持をライバル陣営にも呼び掛けました。
ジョコ氏は、長年インドネシアの政界を支配してきたスハルト時代の政治家や軍高官ではない初めての大統領となります。そのためこの日の就任式では国民の歓迎気分が盛り上がり、首都・ジャカルタに国内各地から人々が集まり、盛大なイベントが一日中続いたようです。就任式の後にはジョコ大統領が街頭に出て異例のパレードを行っていました(暗殺の恐れとか心配しないのでしょうか?)。本当に国民からの人気が高いことが分かります。
しかし、議会で多数を占めているのは大統領選でジョコ氏と対立した野党勢力であるため、東南アジア最大の経済の復活と貧困層支援を中心とした改革を掲げるジョコ氏の政権運営は難航するとみられています。いい意味でも悪い意味でも米国のオバマ大統領の就任時に似ていて、その庶民派的雰囲気かつ理想主義的アプローチで国民の人気は高いのですが、政治的足場の弱さにより政策実行が可能なのかどうかが不安視されているのです。
ジョコ新大統領が目指す貧困層支援を実現するには国民と経済界の支持が続く必要があり、そのためには高い経済成長を達成することが何より重要です。そのためには経済のボトルネックである社会インフラの整備、特に道路・港湾の整備、電力設備の能力増強が早急に必要です。また許認可を与える役人の汚職も海外投資を検討する際のハードルとなっています。
インフラ整備のための問題は財源です。この国は既に諸外国からの借り入れが巨額に上り、未整備のインフラのために海外から進出した企業にとって投資回収がままならない事態もよく起きたため、経済成長が鈍化した最近は外国からの投融資も慎重になり始めていました。「ニワトリと卵」ですが、やはりインフラ整備を先行させる以外ありません。
そのためにはアジア開発銀行などからの一段の融資が欠かせません。インドネシアにとって幸いなことに、中国が進めるアジアインフラ投資銀行設立の動きへの対抗心もあって、日本が支えるアジア開発銀行がさらに積極的になる環境にあることは間違いありません。
またジョコ大統領の進める経済改革が汚職追放にまで実効が上がれば、日本・豪州などからの民間投資は再び盛り上がる可能性は十分あります。何と言っても日本企業が今最も投資したい国のナンバーワンはインドネシアなのですから。