先に挙げた『将校は、砂漠に木を植えた~インドに渡った隼戦闘隊員~』と少し似た話だが、現代の尊敬すべき日本人が紹介された番組を続けて観た。
NHK Eテレで9月10日(土)に放送されたETV特集『武器ではなく 命の水を~医師・中村哲とアフガニスタン~』だ。アフガニスタンで干ばつと闘う日本人医師・中村哲(69)氏の話だ。
http://www4.nhk.or.jp/etv21c/x/2016-09-10/31/13076/2259544/
中村氏は100年に1度といわれた大干ばつに苦しむアフガンの人々の窮状を見て、「水路1本が医者何百人分の働きをする」と白衣を脱いで、現地の人々とともに用水路建設に乗り出す。
驚くことに自分で設計図を作り、自分で重機を動かし、自分で住民たちを説得して働き手を組織する。総工費十数億円は寄付でまかなった。驚嘆すべき、そして尊敬できる日本人だ。
用水路完成までの15年に至る貴重な記録番組だ。その間、アフガンは米同時多発テロ事件が起き、その報復でアメリカから攻撃され、タリバン政権が滅ぼされた。同時に、無辜の民までが空爆などで巻き添えになり、大量に殺された。この戦争でおびただしいアフガン難民が生まれた。
中村氏たちも水路建設中に米軍機に機銃掃射されたという。中村氏は、こんな干ばつで苦しむ人々に空爆をかけるとは、現地に身を置く人間として信じられなかったと当時証言している。全くその通りだ。
その後長く続く「対テロ戦争」で、アメリカ軍機が上空を飛ぶ下、中村氏らはひたすら水路を建設し続けた。中村氏らの奮闘ぶりに触発され、そして自分たちの未来を築くため、近隣農民や難民たち、元兵士たちが協力して大地を掘り進む。水を取り込む川の半ばまで堰を築こうとしても土砂が何度も流されてしまうが、やがて中村氏の故郷の知恵が解決策を生む。その悪戦苦闘の過程は実にドラマチックだ。
干ばつと戦火で荒廃していた褐色の土地が、用水路によってやがて豊かな緑地に変わっていく。人々が戻ってきて地域共同体がよみがえっていく。これこそが日本人の欲する平和活動であり、いのちを救う活動なんだと感じた。
15回めの9.11を迎え、報復に狂った米国がまき散らした憎悪がイスラム世界の一部で増幅して世界をさらに苦しめる中、真の問題解決を見た思いがした。