12月09日(火)に放送されたガイアの夜明けは「ニッポンの”雑貨”を世界へ!」。ニッポンの〝雑貨〟の世界市場への挑戦を追った番組でした。
最初に紹介されたのは秋葉原を拠点とする雑貨店、アッキー・インターナショナル。ターゲットを外国人旅行者に絞った異色の店です。社長は元ラオックスの海外事業部部長で(これも不思議な取り合わせですが)、2002年に独立してアッキーを設立しました。現在3店舗で、「うちは日本人を相手にしない、外国人だけを狙う」という特徴を持ちます。
1号店は中国人旅行者専門。毎週土曜日には大勢の中国人が押し寄せ、携帯型水筒や哺乳瓶など意外な商品を〝爆買い〟しています。3号店は日本に住む外国人向けで、英文キーボードのPCなど、普通の家電ショップが扱わないものを販売します(いいところに目をつけていますね)。
そしてメインは2号店(9月に改装したそうです)で、中国人以外の旅行者向けです。特に雑貨を充実させたそうです。特に売れているのが〝ありそうで無い〟オリジナル開発商品。忍者の置物や外人顔の日本人形などで、日本人や中国人は見向きもしませんが、欧米や東南アジアからの旅行者には大人気だといいます。持ち手が日本刀の柄になっている傘なども大人気だそうです。これらのユニークな商品は、社長自ら外国人を魅了する商品の傾向などを分析し、細かいノウハウを蓄積してきた成果だそうです。
次に紹介されたのは京都の企業、スーベニール(仏語で「お土産」)です。今年9月、「雑貨で日本を元気に!」をキーワードに、外国人に向けた「にっぽんCHA-CHA-CHA」という新ブランドを発表しました。社員の多くが20代~30代、社長も40歳という若さですが、元々は和装履物を手掛ける老舗店の後継ぎだそうです。でも年々縮小する和装業界に危機感を抱いて、新たな和装小物の事業を立ち上げ続けているのです。
その中でスーベニール社は、雑貨などの商品の企画・デザインを担当し、製造は日本各地の職人たちに依頼ビジネスモデルです。商品の多くには伝統の織り技術や染めの技術が使われます。しかも現代的なデザインセンスや色使いがミックスされているのが特徴で、むしろ日本人女性に人気があるそうです。
新しく立ち上げたブランド「にっぽんCHA-CHA-CHA」は、急増する外国人旅行客がターゲットです。日本らしい、しかもかわいらしい絵柄を特徴に、第一弾の商品づくりが始まりました。ジャガード織(ネクタイなどでありますね)で作ってくれる職人も見つけ、発売日も決まりました。しかし結局、当てにしていた染物工場が後継者不足で廃業してしまい、「手捺染」という技法を使うことはあきらめざるを得なくなりました。ガマ口の仕上げも夫婦2人の職人会社が担当し、一日50ケほどしかできません。伝統工芸を受け継ぎながらこうした新しい試みを進めることは、色々大変なことが分かります。
最後に紹介されたのが、畳製造機メーカーの試みです。今年初めて参加を決めたのが東海機器工業、愛知県の畳製造機メーカーです。ニッポンの畳は中国製などとの価格競争も厳しく、国内産業は苦境に立たされています。そこで東海機器工業は海外進出を決意。商品は畳だけに拘るのではなく、外国人にとって魅力的な〝雑貨〟に目を付けたのです。そして畳店の経営者たちとも連携し作ったのは、畳を使ったバッグや名刺入れ、タブレットケースなど。
独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)は、縮小し続ける日本市場だけを相手にしていた多くの中小雑貨メーカーの目を海外へ向けさせるため、東南アジアへ売り込む大商談会(アセアン・キャラバン)を進めています。参加企業数は約50社。今年は3年目で、行き先はシンガポール、タイ、ベトナム。
商談会を開く現地でマーケティング調査をJETROが実施。トレンドのモノ、色、形、販売店、購買層。その結果をベースに、どんな製品を売り込むべきか決めていくのです。そして商談会当日です。東海機器工業と中小雑貨メーカーたち=チームNIPPONは〝雑貨〟で新たな市場を拓こうと奮闘しますが、価格的にまったく太刀打ちできないことが分かります。桁違いなので、ハノイの商談会ではバイヤーの相手にされません。小生から見れば当然の結果です。
はっきり言って、これはJETROの調査力のお粗末さが露呈したといえます。事前に物価と人々の月収などを調べれば、理の当然だったと思います。
ホーチミンの商談会でも当初は同様だったのですが、途中でモバイル/IT系のバイヤーが色々と日本の雑貨に食指を動かしているのを見て、畳で作ったタブレット用のケースを売り込み、商談が成立しました。機器が数万~10数万円するので、それに合せるケースも2万円程度しても、富裕層ならば買ってくれるというのです。
でも結論からいえば、こうした高級雑貨を売るのであればアジアならば富裕層であり、それは香港、シンガポール、マレーシア、台湾、中国沿岸都市に限られます。ベトナムにも富裕層はいますが、絶対数はどうしても限られます。こんな当たり前のマーケティング・センスがないというのではJETROを当てにすべきではありませんね。