本日6日、韓国政府は、日本の水産物に対する不安が高まっているとして、福島県をはじめ8つの県の水産物をすべて輸入禁止にすると発表した。福島第一原発の汚染水の問題で、「韓国国民の憂慮が非常に強く、日本政府から今まで提供された資料だけでは今後の状況を正確に予測することが難しいと判断した」という説明である。
要は「日本政府のいうことは信用できないから、その周辺の県も併せて禁輸措置を執る」ということである。海で福島と隣接している茨城・宮城・岩手・青森、千葉までは分かるが、栃木と群馬まで含んでいることからは冷静な措置とはとても思えない。
これ以外にも、日本全域の畜産物や水産物について、放射性物質が僅かでも検出されれば、検査証明書の提出を新たに求めるということである。この「僅かでも」というのがミソで、自然界には放射性物質はゼロではないので、日本全国どこからのものでも大騒ぎになる可能性がある。
韓国政府は、東日本大震災の直後から、日本の水産物から放射性物質が一定の基準を超えて検出された場合に限って輸入を禁止する措置をとってきた(これは科学的根拠に基づく当然の措置であり、韓国だけでなく多くの国が同様の措置を執っている)。しかし、福島第一原発の汚染水問題が明らかになってから韓国国内では、日本の水産物だけでなく、韓国の水産物まで買い控える傾向が強まっていたようだ。その結果、政府に対して、禁輸措置を強めるべきだとする声が広がっていたとのことである。
菅官房長官は会見で「水産物を含む食品については、国際的な基準を踏まえて厳格な安全管理を行っている。放射性物質の検査結果が基準値を上回った場合は、出荷制限をしており、市場に流通することはない。汚染水の流出の海への影響は、福島第一原発の港湾内にとどまっているうえ、そこでも基準値を大幅に下回っており、全く影響はない」「汚染水の流出に関連する情報は韓国政府に提供しており、科学的根拠に基づいて対応して欲しいと、引き続き求めたい」と述べている。
しかしこの訴えは全く届かないだろう。なぜならそもそもこうした問題を大きくしている韓国政府の政治的意図の可能性は2つあるが、そのいずれであっても菅氏の訴えは見当違いだからである。
風評被害に神経質になっている韓国内の水産業者からの訴えに地元の有力政治家および韓国世論が突き動かされている場合、「科学的根拠に基づいて対応して欲しい」というのはたわ言にしか聞こえない。「とにかく禁輸しろ。市場に出回るのは『安全な韓国産』だけという状態にしないと収まらない」という感情的かつ(この際敵を妨害しようという火事場泥棒的で)利己的な訴えに端を発しているのだから、日本からの輸入ルートが大きな痛手を被るまで手を緩めることはない。日本が汚染水問題に断固たる、そして適切な対処をしない限り、韓国政府も振り上げた拳の下ろしようがないのである。この場合、問題は長引く。
もう一つ、これが風評被害であることをよく理解しながら、国家戦略である「日本叩き」に沿ってこの騒ぎを利用しようと韓国政府が考えている場合、これは非常に有効なオリンピックの「東京誘致潰し策」である。国内で騒ぎ、国際ニュースに取り上げさせ、IOC委員の目に触れさせるよう最大限の努力をするはずだ。しかし東京がオリンピック誘致に失敗した途端、この問題は急速に下火になるだろう(仮に成功したらしたで、妨害作戦失敗としてすぐに終息させるだろう)。
韓国政府がこの問題にどういう姿勢で臨んでいるかは、この日曜にオリンピック誘致の結果が出てから数週で判明するだろう。