あとはISDS条項と農業強化策だ

グローバル

TPPの大筋合意が発表された。強気一本やりで合意形成力の弱いフロマン代表に振り回されながらも、根気強く交渉を続け、米豪仲介などに多大な努力を傾けた、甘利担当相をはじめとする交渉団に大いに敬意を表したい。

早ければ年内にも事務レベルでの協定案が作成され、日本では1月からの通常国会で審議されることとなる。とはいえ各国での国会承認待ちの上での批准となるので、実際の条約発効は2016年一杯掛かるとも云われる。まぁ5年も交渉に欠けたのだから、あと1年くらいは待ってもよかろうといったところか。

もっとも、参加国の政局事情にもいろいろあり、カナダのように今の与党が政権を滑り落ちる可能性が高いところもあるので、順調に各国の承認・批准が進む保証もないらしい。GDPベースで85%以上を占める6ケ国以上が2年以内に批准しないと発効しないということは、日米どちらかが批准できないといけないことになるそうだ。

既に日米交渉で大筋を決めていた線からすれば今回の合意の内容はそれほど外れてはいないが、米国はこれから大統領選挙が本格化するので、揉めるリスクがゼロではない。民主党の大統領候補は多分、ヒラリー・クリントンかバイデン副大統領に落ち着くだろうが、その選考過程でカードの一つとして、労働団体が「批准するな」と大統領候補者に圧力を加えるかも知れない。

共和党はTPPに対し賛成派が多いが、草の根組織のTee Partyの影響力を受ける一貫性のない候補者、D’donald Trumpのようなハズレ者が最後まで残った場合などには、どんな無理難題を持ち出すかは分からない(彼らには「貿易」「マクロ経済」などという「高度な概念」は難し過ぎるのだ)。

では我がニッポンはどうだろう。与党・自民党&公明党は全体としてはTPP賛成派だ。しかし農業県出身の代議士はぎりぎりまで抵抗するだろうし、民主党などは与党を困らせるためだけに反対運動をするのではないか(元々民主党政権がTPP交渉を開始したのに、最近の岡田さんは筋を違えることが多い)。

とはいえ、今の大筋合意内容はニッポンにとっては失うより得るもののほうが多いことは明らか。全農など農業関係者団体も、安倍政権に相当骨抜きにされたので、あまり抵抗はできないだろう。結局は次期通常国会あたりで承認されるのではないか。

唯一、このTPP合意で気掛かりなのはISDS条項だ。この扱いに注意を払わないと、将来多くの企業や自治体が泣きを見ることになる。
http://www.insightnow.jp/article/8521

大筋合意内容と事務レベルでの協定案を改めてチェックする必要があるが、きちんと制御できる内容となっていることを祈りたい。

そして残る課題はニッポンの農業強化策だ。政府は今までは専守防衛にしか興味がなかったため、今回もコメ防衛に偏った交渉内容になっていたようだが、本質的にはニッポンの農業もこれからは攻め時だ。農業関係者に加え、地方創生に関わっている方々、そして小生のようにそれらの動きや民間企業を通じてビジネスをサポートしている人間も、もっと知恵を出していかねばならない。