私が参加しているABEMAの討論番組『For Japan~日本を経営せよ』では毎回の収録(翌月の放送4回分)において一つのテーマが決まっている、というお話を以前にもしました。
今週は、私が参加した11月放送の第29~32回の「日本のお金の大問題」についてどう考えたかを、事前アンケートの質問とその答という形でお伝えしたいと思います。その前書きはこうでした:
日本のオカネが大変です。少し前にブラックフライデーを超える大きな株価の下落もありましたが、何より長期的に見た日本の価値の下降は止まるところを知りません。
給与や物価について、経営者目線で率直なご意見をお伺いできますと幸いです。
Q1: Q1. 日本人の給与は全く上がりません。それでも税金や保険料、光熱費は上がり続けています。
給与が上がらないのはなぜだと思いますか?また改善は出来そうでしょうか?
租税率は47%を超えました。ほぼ半分は国に取られます。この租税率はスウェーデンなどと比べたら安いですが、アメリカなどと比べたら高いです。47%の租税率はどう思いますか?
A1: 直近3年ほどを除いて、それまでの約30年間日本人の平均給与が上がらなかったのは事実です。その直接の原因は経営者マインドが縮こまってしまい、人件費を圧縮すべきコストだと捉える一方で、(リスクに備えるとの意識で)内部留保および(欧米の真似をして)株主配当を優先していたからです。
なぜそのように経営者が考えるようになっていたのか。その理由は、1)デフレ意識が浸透し「低価格でなければ顧客に売れない」と信じていたからであり、2)「十分に稼げなかったから払いたくとも払えない」という言い訳が通用したからです(実際には大手企業の場合、内部留保に余分に回す余裕がたっぷりとあったにもかかわらず)。
いずれもあまり自分の頭で考えなかったということではあります。この改善はできつつあります。実際、最近の3年での平均賃上げ率は3%台、4%台、5%台と尻上がりに改善しています。
この背景は、先の「経営者マインド」が逆転し、内部留保や株主配当よりも優先して賃上げすることが世間から褒められ、「(物価高に苦しむ)従業員の生活を守る」とアピールすることでエンゲージメントを上げたい、または離職を食い止めたい、という経営者心理が強く働いているからです。
ただし、賃上げ原資である付加価値を大幅に増やしているのはごく一部の大企業だけで、その他の大手を含む大半の企業は内部留保の積立を減らすか、利益を削って(つまりやせ我慢をして)大幅な賃上げをしているに過ぎません。
だからここからは、従業員が労働生産性を上げて賃上げ原資である付加価値を十分に稼げるかどうかが、賃上げ継続の可否を決めます。
さて、47%の租税率は中福祉レベルの国にしては高いと言えます。
しかし既に超高齢化社会を迎えている日本では、高齢者福祉に莫大な社会費用が掛かる構造です。しかも高齢化と労働人口の減少はますます進行し、高度成長期にばら撒き的に作りまくったインフラの老朽化はこれから本格化しますし、エネルギーを外に頼る構造も変わりません。
だからこの租税率は(残念ながら)今後さらに上がることはあっても下がることはあり得ません。
(以下、次回に続きます)