『For Japan』シリーズ(11月放送分)「日本のお金の大問題」#32

ブログ社会制度、インフラ、社会ライフ


『For Japan~日本を経営せよ』の「日本のお金の大問題」テーマについての私の考えの続きです。

A5: 日本が得意で世界で差別化できる領域を伸ばすことが第一です。

具体的には、液晶やリチウムイオン電池のように日本で育てた技術でありながら量産化や実用化における資金が十分集まらずに中国・米国などに追い抜かれるという失敗を繰り返さないよう、ペロブスカイト太陽電池やiPS細胞のような有望な技術の応用・量産面に対し官民の投資額のレベルを一桁上げること(そのために政府から金融業界と産業界に働き掛けること)。

コンテンツ産業の世界市場への進出への資金・人材面の手当と、業界でのクリエイター待遇改善策も同様。

もう一つは日本の再弱点である生産性の低さを克服し新陳代謝を促すため、実施可能で現実的な策を総動員することです。

具体的には、金利引き上げに耐えきれないゾンビ企業への無駄な支援をせずに市場退出に任せること。中小零細企業が多い業界再編を促進すべく、一定規模以下(例えば1億円以下)のM&Aにおける売り主の譲渡益に掛かる税率を大幅に低く(今は個人事業主なら約20%⇒例えば2~3%程度に)すること。

産業単位で注文取引の(ファクス・電話を止めての)電子化を、補助金も付けて半強制的に進めること。

大企業での解雇規制を緩めて人材の流動性を高める一方、野放図に広がった非正規雇用を大幅規制して正規雇用を基本とするよう規制政策を切り替えること。

常態化している道路渋滞の解消のため、(道路管理者だけに任せずに)IT業界など外部の知見を総動員して解決策を探ること。等々。

さらに言えば、国富の流出を抑制することも重要です。具体的には大きなものとして2つ。エネルギーとITインフラによるものです。

まず、日本はエネルギーの大部分を海外からの原油と天然ガスに頼っていることは周知の事実です。火力発電に頼っている構造を変える必要があります。簡単に言うと中東に毎月毎年高額の税金を払っているようなものです。

ペロブスカイト太陽電池の実用化や蓄電システムのコスト削減・拡充を進めるなどしての再生可能エネルギーの拡大と、核融合システムや水素など次世代エネルギーの開発・実用化を進めることが重要です。

もう一つ、ITインフラというのは最近「デジタル赤字」という言葉をお聞きになったかと思いますが、日本企業がDXを進めれば進めるほど、我々戦略コンサルタントが事業開発を支援すればするほど、クラウドサービスの利用料など海外IT大手への支払いが増える構造があります。先に述べたエネルギーと同様、米国のGAFAMなどに巨額の料金をずっと払う構造が出来上がっているのです。

そう簡単に構造転換ができるとは思えませんが、こうした部分は今から戦略的に考えて取り返すようにしていかないと、日本は色んなところで小金を稼ぎながらも巨額の国富を定常的に支払い続けることで、なかなか豊かになれない構造のままです。

それらを転換できれば、日本は海外から求められる商品・サービスのポテンシャルが大きく、人口が減る中で却って一人当たりのGNPや付加価値を稼ぐことができるようになると期待できます。