『人工光合成』のもたらす夢と元気とエネルギー

ビジネスモデル

8月11日の「夢の扉+」は「CO2を地球のエネルギーに!世界トップ!CO2からエネルギーをつくる奇跡の技術 『人工光合成』で燃料を生み出し、地球と人類を救う!」(…これも長い)。ドリームメーカーはパナソニック先端技術研究所の工学博士、山田由佳氏だ。『少しでも可能性があるならば、トライする価値がある』。これが山田氏のモットー。

山田氏は1987年に東京大学工学部を卒業後、松下電器産業に入社、2000年にパナソニック先端技術研究所に転属。転機となったのは13年前、人類が250年足らずでCO2を出し続けて地球を燃やし始めていることが描かれた会社のポスターを見、自分にできることを考えた。当時の所長だった安立正明さんからは、「これからの電機メーカーの使命である環境エネルギーに取り組んでほしい」と言われた。

地球温暖化の“元凶”とされる二酸化炭素=CO2。そのCO2を光と水を使ってエネルギー、燃料や化学原料に変えるテクノロジー、「人工光合成」の研究で世界をリードするのが、山田氏が率いる研究チーム。独自のアプローチで開発を進め、2012年、世界最高のエネルギー変換効率を実現した。

世界中の研究者が人工光合成の実用化に向けてしのぎを削る世界。いかにCO2の反応を高めるかがカギとなる。山田たちは、幾度も実験を繰り返し、電機メーカーならではの発想で“ある材料”にたどりついた。それがLED照明に使われる半導体、窒化ガリウムだった。

ところが、光触媒から電気を運ぶ電極の前にロスが生じていた。ある研究員が電極を水につける方法を提案した。山田さんは「可能性が少しでもあるなら」と試すことを決断し、人工の光でCO2からエネルギーの源を作ることに成功した。その後実験を繰り返し、昨年には変換効率が本物の植物に追いつくまでに至った。これは世界トップの位置にいることを意味する。

番組で山田たちが挑むのは、太陽光の下でCO2からメタンガスを作る実験。レンズが太陽光を追尾し光を集め、水槽を見ると反応が始まっていたが、晴れたり曇ったりを繰り返した。3時間半が経過したのち、結果を確かめると…はたしてメタンガスは検出され、実用化への大きな一歩を踏み出したのである。

特筆すべきは、山田氏の類まれなリーダーシップ。明るい性格で、皆の力を束ねながら変えていく、統率力とチャレンジスピリット。街の人の声の通り、この技術が日本発信なのがうれしい。全体としてはぱっとしないパナソニックだが、元気のある部署は幾つもあることが世の中に伝わって嬉しい限りである。