9月2日に放送された「未来世紀ジパング」は、「五輪のライバル”トルコに異変”暴動の裏側に潜む「革命ビジネス」とは!?」という、ちょっと訳の分からないタイトルだった。でも録画を観て納得し、併せて驚いた。
2020年のオリンピック開催都市が、いよいよ日本時間の9月8日(日)に決定する。名乗りを上げている3都市の中でも有力視されているのがトルコ・イスタンブールだ。この10年間で国民所得が倍になり、1台1000万円の高級車、1億円を超えるプール付きの高級住宅も飛ぶように売れている、急成長国・トルコ。経済苦境に苦しむマドリードとは対照的で、既に一度開催済みでしかも原発事故後の汚染水処理を制御できない日本・東京に対し、「アジアとヨーロッパの架け橋」を自負する国、「イスラム圏初のオリンピック」と、半年ほど前にはダントツで招待戦をリードしていた。
番組冒頭ではイスタンブールにおける24時間体制の「スパルタ式大清掃」の様子を映す。政府の職員の厳しい指示下、町中にはゴミ一つなくなっている。市内を走るトラムや海峡フェリー、高層ビルまでがオリンピック招致の広告で溢れ、町はオリンピック一色だ。
ところが今年5月の「トルコ暴動」で始まり、招致活動がクライマックスを迎える中、街中では今も反政府デモが続いている。破壊活動まで起きた「トルコ暴動」は世界に衝撃を与え、隣国シリア情勢と並んで、同国が長年誇ってきた「安心・安全」に疑問符をつけられる事態になってきた(「これで東京が有利になってきた」とほくそ笑む招致関係者は恥を知るべきだ)。これに対し、トルコ政府は「デモを裏から煽ってビジネスにしている人間がいる」「外国勢力の存在がある」と断言。どういうことか。
番組取材班はトルコ国営放送の元日本特派員に密着。あの「アラブの春」(チュニジア、エジプトなど)、ウクライナ、ベネズエラなど、世界各国のデモや暴動、革命の場で使われていた「謎の拳マーク」という共通点から、「革命をビジネスとして輸出している企業」オトポールに辿り着く。取材班は組織の中心人物に会うべく、今でも紛争の傷跡が残るセルビアへ飛んだ。かつてセルビアの独裁政権を倒した英雄で「エジプトの政変に関わった」と自ら話す人物・ポポビッチ氏にインタビューする。この番組としては異例の展開である。
この取材で判明したのは、セルビアの反政府運動を指揮したグループが母体になったオトポールは、いわば「革命指導コンサルティング会社」だということ。自らが現地に乗り込む代わりに、各地の運動指導者に有償で革命ノウハウを教え、セルビアで訓練を施す。イスラム圏のアルカーイダや旧ソ連が自らの兵士を鍛え上げて派遣していたのとは全く違うモデルであり、しかも革命精神に共感してではなく純粋なビジネスとして行っているようだ。ポポビッチ氏は母国で政治家になる代わりに、自らの才気と仲間の力を国際ビジネスとして活かす別の道を見つけたようだ。
トルコの暴動との関わりは言下に否定したポポビッチ氏だったが、トルコ国営放送の特派員は強い疑いを抱いたと語る。保守的なイスラム教徒で強引な性格のエルドアン首相が播いた紛争の種とはいえ、親日国・トルコは大変な連中に目を付けられたのかも知れない。