「追跡 復興予算 19兆円」に役所の欺瞞を観る

BPM

NHKスペシャル「シリーズ東日本大震災~追跡 復興予算 19兆円」を観た。震災復興を名目に大増税で集めた膨大な復興マネーがとんでもないところに使われ、肝心なところに使われない実態が、丁寧な取材により追求されていた。

19兆円の予算の実態に迫るため、取材班は専門家の協力を得て、5万ページ超の各省庁の予算関連資料を検証。500を超える事業のうち、被災地には直接投じられていない予算が次々と見つかった。反捕鯨団体対策費に23億円。国立競技場補修費に3億円。沖縄など全く関係のない地域の土木工事等々。被災地以外に205事業、2兆円超を計上していた(これは明らかにおかしいもののみ)。取材班の追求に答える経産省や外務省の予算計上部門の人間の白々しい言い訳コメントが虚しい。関係ない地域で予算執行される地元の人でさえ呆れかえるほどである。要は、元々震災とは無関係に予算に計上したかったが「事業仕分け」や「シーリング」により計上が難しかった事業を、どさくさに紛れて押し込んだのである。

一方で復興予算は、必要としている被災地には充分に届いておらず、津波で壊滅的な被害を受けた町の再建は進んでいない。「グループ事業」を申請した商店主たちは、予算枠が小さ過ぎて優先度が低いと判断され、支援を受けられず追い詰められている。医療現場では、被災した民間病院や診療所には再建資金が届かず、殆ど自己負担を余儀なくされるため年齢等によって再建を断念したり地域を離れたりするため、被災者が思うような治療を受けられない。全く理不尽なことである。彼らに再建してもらうために巨額の震災増税を国民は受け容れようとしているのに。

何ともやるせない現実を見せつけられた。役人のいい加減な仕事のせいで、最大4割程度が本来の政策目標とはかけ離れた予算執行になっているかも知れないという。そして役人はその誤りを絶対認めようとしないし、政局・選挙のことしか頭にない政治家は全くこうした現実に向き合おうとはしていないようだ。

こうした政治・役所の欺瞞を暴くことこそメディアの最大使命である。NHKの報道部門に拍手を送ると共に、中央官庁は間違った予算の使い道を一刻も早く正して欲しいものだ。