「年収103万円の壁」税制の愚かさ

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他の先進国に先駆けて人手不足が様々な問題を引き起こしている日本。企業も働き手を確保するために、社員の給与だけじゃなくパート・アルバイトの時給も上げています。これがデフレを完全に消滅させ、物価高に苦しむ消費者の生活を救う道でもあります。

しかしながら(他の会社・店に奪われないよう)パート・アルバイトの時給を上げることで却って人手不足になってしまう、という奇妙な現象が今、生じているのです。何かというと、時給が上がるといわゆる「年収103万円の壁」を突破しそうになるので、パート・アルバイト従業員が自主的に勤務日数を減らすよう調整するのです。

当然、シフトが埋まらなくなってしまうので、会社・店とすると新たに頭数を増やす、つまり新規にパート・アルバイトを雇い入れないといけなくなって、さらに働き手の奪い合いが激しくなっているのです。

飲食チェーン店や小売などパート・アルバイトに依存している業界では元々、6割以上の従業員がこの「年収103万円の壁」のための就業調整をしているのだそうです(野村総研調べ)。その壁を超えないぎりぎりまで働いていた人たちが、時給が上がることで「年収103万円の壁」を超えないよう、自主的に勤務日数を減らすよう調整するということなのです。

これに関する税制および「年収103万円の壁」がどういう仕組みなのか、専門家じゃない人にはちょっと分かりにくいところがあるのですが、結論だけ言うと、「所得税が自分(パート・アルバイトの人自身)に掛かってきて、扶養者と合わせたトータルでみたときに手取りが下がってしまう『ボーダーライン』が年収103万円」ということなのです。

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本来なら今まで以上に働けるだけ働いて、高くなった時給に基づいて手取りを増やしてくれれば、本人家族はもちろん、雇用している企業も助かるし、国としても納めてもらえる税金が増え、本人が増えた手取りの分だけ消費してくれれば景気が回復し、社会としても嬉しい限りです。それこそがアベノミクス以来の政策の狙ってきたところのはずです。

それなのにこんな基本的な部分の制度改善を怠ってきたのは政治の怠慢に他なりません。財務官僚はとっくに問題に気づいていたでしょうが、彼らは税制を守ることを前提にそれが有効に働く方向に動きます。社会を適切な方向に導くよう税制を改善するのは政治家の役目です。

自公民維の主要な政治家の家庭では奥さんは専業主婦(というか非就業)ばかりです。精々が政治団体の幾つかの管理を担当しているくらいでしょう。だから世の中では専業主婦なんて今や贅沢だし、大半の(高齢者を除く)夫婦家庭が共働きである、という実態もピンと来ないのです。

だから未だに「年収103万円の壁とかいうが、やっぱりお母さんが家を空ける時間が長くなるのは子どもの教育や愛情の点でよろしくない。だからこの税制は日本の家庭を守るためのものだ」(この言い振り、ほとんど旧・統一教会の主張そのもの)といった時代錯誤の感覚のままで、改善・撤廃に手を着けてこなかったのです。愚かですね。

こんな専業主婦家庭のみが得をする税制は時代錯誤かつアンフェアです。 この辺りに岸田首相が手を着けるかどうかで政権の理念や意志、そして先行きが見通せると思います。