「不良社員」から「会社の宝」へ。「包装」に賭けた男の人生

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6月3日に放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀」は、「惚れた仕事は、愛し抜け」と題し、包装管理士・岡崎義和氏を採り上げた。包装の工程全般を取り仕切る専門職である。住宅設備機器メーカーのTOTOに勤務する岡崎氏は、包装の設計を30年間担当してきた。多くの企業が段ボールメーカーに包装の設計を委託する中、TOTOはあえて自前で設計を行い、最適な包装を岡崎氏に託している。

彼が包装の設計で常に念頭に置くのは、包装は客の手元に届いた途端に“ゴミ”になるということ。そのため、包装の設計に際しては極限まで無駄を省き、少ない材料で包装を作ることにこだわる。改良に次ぐ改良を加えた結果、10年あまりで17億円のコストダウンに成功した。その成果から、今や岡崎氏は「会社の宝」と呼ばれている。しかし若き日は文句ばかり言って手のつけられない不良社員だったという。当時の写真はいかにも「ヤンキー」である。

ある上司との出会いで仕事に前向きになり、28にして出会ったのが包装の設計という仕事だった。当時、包装の設計は軽んじられ、設計室も階段下の物置用のスペースがあてがわれていた。「包装」が置かれている立場を自らの境遇と重ね合わせたという岡崎氏は奮起し、がむしゃらに包装を学び、周りから評価されるまで成長した。だがその後、無理解な上司とぶつかり、畑違いの営業へ異動となり、包装の世界から離れた。

半年後、営業に走り回る岡崎に1本の電話が入った。社を代表する技術者、小林博志氏からである。温水洗浄便座の包装を改革してほしい、「お前に3年やる。好きにしろ」という(この話をする際、岡崎氏は涙を隠せなかった。この反骨の人にして、小林氏への恩に感極まったようだ)。岡崎氏は包装の道に戻り、「惚れた仕事は、愛し抜け」という思いを胸にさらなる飛躍を遂げ、今や「会社の宝」とまでなった。

定年を控えた岡崎氏は、集大成としての新しい包装の開発に挑んでいた。最低限のクッションで製品を守り、わずかな調整で形状の異なる製品を包むことができる、次世代の包装だ。実行部隊をとりまとめる部下の廣松隆明氏に引き継ぐべく、岡崎氏は持てる技術をすべて注いでいた。その指導は厳しく、仕事に誇りを持つ男の顔だった。