「ロボット vs 職人社長」と「30年後も食える仕事」

ビジネスモデル

日経ビジネス2013年8月12・19日号の特集が面白かった。ロボット工学の発展により、長年手作業で続けられてきた「職人技術」が急速に姿を消しつつある。例えば吉野家の店員による「盛りつけ」作業は今や店舗の9割弱でロボットに置き換わっているそうだ。また、アマゾンの物流拠点でも近い将来、大幅な省人化が進む可能性が出てきているという。プロ棋士でさえ将棋プログラムに負けてしまうほどIT化の進歩は凄まじい。

この調子で業界を問わず自動化が進んでいくとしたら、今後数十年で既存の仕事の多くが消滅しかねないのではないかと懸念する人は多い。「これから始まる第3の波は、コンピューターや人工知能の進化による失業。あおりを受けるのは高等教育を受けたホワイトカラーだ」という予言もある。そこで気になるのは、職人技的頭脳労働まで消えてしまうのかどうかである。そこで企画されたのが「ロボット vs 職人社長」である。

登場したのは、1.「博多一風堂」の河原成美CEO vs 麺茹でロボット、2.星野リゾートの星野佳路社長 vs 全自動ホテル、3.伝説の投資家、ジム・ロジャーズ氏 vs 最新自動投資プログラム、4.宮大工の小川三夫氏 vs大工ロボット、5.ジャパネットたかた・髙田明社長 vsビッグデータ分析&司会ロボの5つである。結論からすれば職人社長の5連勝に終わる(少々ひいき目だが)のだが、人口知能を応用したロボット技術が人間の「脳力」に肉薄していることも事実だろう。

それに続いて、読者が一番気になる「30年後も食える仕事」というのが続く。専門家の意見を参考にまとめたものだが、4つの種類に分類される。1つめは「ロボットによる代替が難しい仕事」だ。プログラム化できない「勘の世界」の職人技である。2つめがそもそも「自動化のニーズがない仕事」、例えばプロスポーツ選手やグラビアアイドルなどである。3つめは「機械化社会の維持に必要な仕事」で、コンピューター/ロボット技術者などである。4つめは「ロボットにはやって欲しくない仕事」、例えば美容師/医師/保育士/マッサージ師などである。しかしこの一部は人々の価値観が変わると『ロボットでもいいや』となる可能性があるので、少々願望が入っている感じもする。

結論からいうと、多くの職人的仕事、アドホックな仕事、創造的仕事がロボットに代替されずに残るが、普通のホワイトカラー・ブルーカラーの仕事はかなりの割合で代替されてしまうのではないか。だからといってロボットを進化させる手を休めてはいけない。日本がやらなければ韓国、中国、米国、欧州の各国がやるだろう。今、日本は様々なロボット分野で主導権を握っているのだから、そしてロボット業界がこの先世界的巨大産業になるのなら、次世代ロボットを一大輸出品またはライセンス商品とすることで、世界をリードする立場に立つべきだろう。