「ニッポン」を買う外国人を嫌がる、偏狭なナショナリズム

グローバル

6月14日に放送された「たけしのニッポンのミカタ」は、「日本を買え!外国人が狙う不動産&水資源&人材」と題して、中国人をはじめとする外国人が買おうとするニッポンの資産の色々を紹介した。司会はビートたけしと国分太一、ゲストは黒鉄ヒロシ、北斗晶。

最初の登場人物は、中国でアパレルショップを経営している女性。中古マンションを投資目的で購入を検討している。次は北海道・ニセコ町で1万坪の土地をもちペンション経営をしている男性。自分の土地を見知らぬ男たちが調査していた。その数日後、土地を売って欲しいと業者と現れたのは中国人。その人物は水資源の豊富な場所を買おうとしていたのである。

日本の土地制度は世界中の誰もが買えることが特徴で、これはアジア太平洋14ヵ国の中でも日本だけだという。しかしこれは(意図的な?)間違い。マレーシアもまた外国人に土地購入を開放している(但し最近高騰しているが)。

海外から狙われているのは「土地」だけではなく、「人材」も狙われているとこの番組はいう。ヘッドハンティングの会社によると、最近、外国系企業からの依頼が増加。高額提示で人材を求めているという。特にホテルなどのサービス系やインフラ建設系で高スキル・経験豊富な人がターゲットという。

最後は日本の伝統の話。「盆栽」はいま外国人に大人気で、盆栽を堪能するために日本を訪れるツアーまであるし、外国で盆栽の専門誌が発行され、イタリアでは専門学校まで出来るほど。「盆栽」は世界共通のアートとして認識されつつあるという。番組は静岡県のある盆栽業者に取材。そこにはスペインと台湾からやってきた弟子がいる。5年で一人前といわれる盆栽職人。惜しみなく技術を教える師匠だが、この弟子たち、いずれ日本を離れ、母国で彼らは盆栽職人になるのだ。日本での伝統工芸の継承はどうなってしまうのか、心配になる。これは盆栽に興味のある若い日本人を見つけられないという問題である。

番組全体を通して感じたのは、外国人に対するいわれのない偏見である。

なぜ外国人が日本の不動産や会社、人材を買ってはいけないのか。むしろ日本に興味を持って、投資してくれるわけであるから、有難がるべきである。水資源の豊富な日本の土地を外国人に買われて、そこで汲み上げた水が海外に売られ、日本人があまり儲けに関与できなければ面白くないという感情は分かるが、それなら自分が投資すればいいだけのこと。また、日本人が海外で似た様な投資をしているケースも多い。

もし水資源を海外に売ること自体に反対するなら、逆に石油や天然ガスを輸入するしかない日本はのたれ死ぬことになってもよいことになる。日本人には自由にさせろ、外国人がするのはけしからんというのは矛盾している。

黒鉄ヒロシ氏の言い方も偏狭な攘夷派と感じた。新大久保辺りで「韓国人出ていけ!」と叫ぶヘイトスピーチのデモ、または先日物議をかもした維新の会での西村代議士の差別発言などと同様な、アジア系外国人に対する差別意識がベースにあるのではないか。こういう歪んだナショナリズムが公共の電波で平気で流されてしまうのはとんでもない。中国や韓国での放送の論調も似たようなものらしいが、それと同じ低いレベルになってしまってどうする。ニッポン人よ、品格を失うな。