米国大統領選の投票日を2日過ぎようとしていますが、予想通り、いまだに決着がついていませんね。本当に「目の離せない」状況になってきました。
日本の新聞各社は「トランプの予想外の善戦」と報じていますが、米国からの情報をちゃんと分析していれば「予想外の」というセリフは出てこないはずです。やはり日本のマスメディアは日本の読者の希望的観測に流されてしまい(日本人には「トランプ嫌い」が多いようです)、報道担当者の目までが曇ってしまうのですね。こういうのは「ジャーナリストとしては失格」とされる話です。
似たような話で、巷には「中国崩壊論」の本や記事が溢れています。これも、最近の日本人読者には中国嫌いが多く、そうした読者感情におもねってしまう心理が働いているのでしょう。でもその内容の多くは過去に何度も主張されたもので、最近になって新たに発生したものではありません。
実際、こうした「中国崩壊論」本や記事は過去に一定周期で盛り上がりをみせています。ほとんど一種の流行ですね。でも同じ著者が「崩壊する」と喚きたてたタイミングが幾度か何事もなく過ぎていても、誰も「おかしいだろ」と非難しないのも不思議です。ほとんど「〇〇の大予言」の類です。
もう一つ、「トランプ敗戦」と「中国崩壊」を期待するがゆえに目が曇る人たちに共通するのが、「本当にそうなったときに自分たちにどんな影響がもたらされるのか」を突き詰めて考えていないことです。
例えば「トランプ嫌い」の日本人に、「ではバイデンが大統領になったら、あなたのビジネスに具体的にどんな影響が出るのか、いい面と悪い面はそれぞれ何か?」と問いただしたとしましょう。社会常識もビジネス知識もある人でも「いや、そこは…」と口ごもるでしょう。そう、よく考えている訳じゃないのです。バイデンの外交政策も経済政策も知らないという日本人が大半なのです(ちなみに米国人でさえ具体的なところでは怪しいのですが)。
同じように、「中国崩壊」論を信じて期待している日本人に、「では中国経済が行き詰って社会が混乱したら、あなたのビジネスに具体的にどんな影響が出るのか、それに対し何か対策を考えていますか?」と問いただしたとしたら、その大部分の人が「え…と、どうなりますかね」と困ってしまうでしょう。
つまり「対岸の火事」として高見の見物気分で中国の混乱を眺めていられるという前提で、この「中国崩壊」論を楽しんでいるのです。でも実際にそうした状況になったら、日本経済の痛手は生半可なものでは済みません。リーマンショックの再来となるのではないでしょうか。
さて、そうした批判をしている私個人としてはどうか。微妙なのです。
トランプは大統領に相応しくないし、私の好きな米国のいいところを壊すばかりなので、トランプ再選は望みません(これは前回にも申し上げました)。でも半々の可能性でトランプは再選されます。そしてバイデンが当選したとしても、あのお人よしの老人に世界を引っ張るリーダーシップは望めません。多分、分断された国内の事後収拾だけで4年の任期の大半を費やすでしょう。私が期待しているのは次のペンス政権です。
また、中国政府(中国共産党)は嫌いだし危険と思っていますが、中国経済の崩壊も、社会の崩壊も望みません。日本にとって大災難になることは間違いないからです。でも中国経済のかなりの悪化と社会混乱の可能性は結構高いと思っています。米国からの圧力が(仮にバイデン政権になっても)今後も続くと考えるからです。
それは多分、世界経済の2ブロック化にまでつながる可能性が高いと考えています。米日欧印豪ブロックvs 反米ブロック(中露・イラン・パキスタン・カンボジア・キューバなど)という姿です。
日本がその影響を極小化するためにできることは、早めに脱中国経済(≒脱中国関連のサプライチェーン)を果たし、米国が主導する米日欧印豪ブロックで生きていく経済構造になるべく早くトランスフォーム(変革)することです。そしてそこに東南アジアの多くの国を仲間として引き連れていくことです。しかし生半可なトランスフォームではありませんし、この国がそうした高度な意思決定をできるとは、申し訳ないのですが期待してもいません。