最近読んだ本での一節。かのデミング賞で有名な、TQMの提唱者であるW/エドワーズ・デミング博士が紹介しているエピソードである。
あるメーカーでは製造工程で様々な可燃製品を扱う。その結果、工場ではたびたび火災が発生したそうだ。その社長が予防のためにとった措置は何だったか?
実は社長は全従業員10500人に対し手紙を送ったそうだ。「どうか火をつけないでくれ」と。
彼はこの問題を従業員の中に放火魔がいると捉えたのだ。仕事のやり方や指示の在り方がまずくて、ミスとして火災が発生していると捉えずに。
しかし実は、この社長の考え方は、世界では稀でない。何かうまくいかない状況が繰り返されると、人(特に上層部)は「この連中はどうしてこんなにできが悪いのか、もしかすると会社に不満でわざとやっているんじゃないか」と、人間の問題だと考えがちなのだ。こうしたボタンの掛け違いは、グローバル展開で文化背景の違うところで仕事をするようになるとますます拡大しかねない。ご用心、ご用心。